放火魔と赤い果実
赤い果実を求める青年の最期です。
赤い果実とは何のことで青年はなぜそこまで果実を求めるのでしょうか。
「燃えろ…!」
爆発・悲鳴・炎の燃ゆる音
まるでよりどりみどりの灼熱地獄。
「嗚呼!素晴らしき哉、焼夷弾!やはり、そこらの火薬とはまるで威力が違う!」
炎を纏ったような真紅の外套を身を包んでいる長髪の青年はほう、と恍惚とした溜息を洩らしながら言った。
その間も炎は燃え盛り、燃え移り、と爛々とした青年の眼に移ろいゆくその姿を魅せていた。
「いけない。早く赤い果実を採りに行かなければ、採られてしまう!」
青年は逃げ惑い群れを為す群衆をかき分け炎の許へ進んでゆく。
炎を求める様に、炎に魅入られた様に、
「早く!」
「はやく!」
「ハヤク!」
取りに行かなければ!
そして、狂った様に。
赤い果実の許へ、炎の許へ。
青年は炎の許へ進んでゆく。走ってゆく。
途中で誰かがそちらへ行っては駄目だよ!などと声を掛けてくれたが、青年はまるで聞き入れない。自らの生命よりも赤い果実が大事だとでも言うように。
遂に青年は炎の中へ入った。青年はもう助からないとでも言うように肉の焼け焦げる音、そして匂いがした。
しばらくすると焼け焦げた焼死体の様なナニカが出てきた。
「ヤッ…トミツ…ケタ……!」
ナニカは真っ赤な生命の輝きををもってふらつきながらと出てきた。
そして前触れも無く崩れていった。
役目は果たしたとでも言うように。
もう二十年も前の話だ。
今まで見てきた事件の中で最も恐ろしい、そして、最も難解な事件だった。
私は後にも先にもあの様な事件は見たことも聞いたこともない。
え?ナニカが持っていたものだって?
君が当てて見たらどうだい?
きっと驚くよ…あんな悪趣味なもの滅多にないからね…
最後までお読みいただきありがとうございました。
赤い果実や青年が求める理由が思いついたら教えてくださいね。
僕はわかりません。