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その六 駿府

駿府は人の往来が多い商業地で街道随一の一大文化圏でもあった。


信秀が治める西尾張と同様、街道は整備され(いち)や港は行き交う商人で溢れていた。


日吉は駿府の賑わいを目の当たりにして信秀が今川を恐れる理由を悟った。


・・・・ 織田の羽振りの良さと似たところがある ・・・・


今川にとってはより都に近い尾張の繁栄が邪魔であろうし、織田にとっては武田と北条と手打ちを済ませた今川が三河を越えて西進してくるであろうことは容易に予想できた。


双方の覇権争いの緩衝地帯が三河で、それゆえ竹千代は双方から人質になることを強いられたのである。


このまま尾張の交易権までも今川の手に渡れば、その財力・兵力において他を圧倒する戦国最大の勢力となるのは明らかだった。


いまだ尾張一国すら平定していない織田にとって、それは脅威以外の何者でもなかった。


今川家の当主の義元は、次男ゆえ幼少から青年期まで都で僧として過ごした文化人でもある。


その義元の統治者としての能力は戦国最高で、信秀はそれに対抗するために自分を信長に与えたのであろうことが日吉には理解できた。


日吉は駿府の繁栄を目の当たりにして、自分より十六歳も年長の義元の心に果たして上洛への野心などというものを炊きつけられるのか少し不安になった。


しかしここまでやってきた以上、後戻りは出来ない。


自分の任務は義元に真実を伝えるだけで良いという事が日吉の背を力強く後押しした。


蜂須賀小六と前野将右衛門を衛士に従え騎乗する日吉はどこからどう見ても都から落ちてきた公家一門のそれであった。


義元が元々都の住人であったことで駿河の国には没落公家が多く身を寄せ、如何にも公家然とした日吉一行の駿府入りを阻むものは一切無かった。


それどころか各地の国人領主は義元へのご機嫌取りに積極的に護衛を引き受けて出た。


「今度の御公家様はいままでの公家衆とは格式が別格みたいだぞ ・・・・ 」


「名乗りもせず、一切正体を明かさぬが相当な御身分であらせられよう ・・・・ 」


義元の配下の者達からは、そんな風に見られていた。


苦も無く駿府の今川屋敷の門に着いた日吉の一行は応対に出たお抱え坊主に初めて身分を明かした。


予想通り義元の歓迎振りはこの上ないものであった ・・・・

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