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その三十八 太閤記

尾張半国に相当する下四郡を支配下に収め、家督争いにも一応のけりをつけた信長は今後のことを打ち合わせるべく清洲城で藤吉郎一党との密談に及んだ。


「さる、どうだこの城は。尾張一固い城ぞ。まあ美濃の稲葉山には到底及ばぬがな」


藤吉郎にとって清洲城は二度目であった。


前に訪れたのは守護所の方で斯波義統を謀るのが目的であった。


「はっ、信長様に相応しき城と存知まする ・・・・ 」


藤吉郎にとって、ここは余り気持ちの良いところではなかった。


「ここに居られるのも貴様達の働きのお陰よ。礼を申すぞ」


「 ・・・・ 勿体のうお言葉に御座います」、小六と将衛門ともども平伏した。


信長はにやにやしながら藤吉郎と小六達を一回り見回したのち、今日呼びつけたる本題に入った。


「これまでそなた達には織田の家臣達とは別行動で探索と調略を担ってもらってきた」


「ははっ ・・・・ 」


敏感に何かを感じ取った藤吉郎は固唾をのんで信長の次の言葉を待った。


「藤吉郎の出自は今後も固く秘したままにしておくにしても、今更そなた達が今川領に戻ることも有り得ぬことであろうし、これからは正式な織田家臣団の一員として働いてもらいたいと思うておる。

これまでの働きに対するわしからの褒美と思ってくれ。

それにそなた達をいつまで裏方にしておけるほど今の織田には逸材がおらぬ。どうだ、藤吉郎」


「ははっ、益々もって有り難きお言葉に御座います。小六よ、将衛門、良かったのう」


小六と将衛門は頭を床にこすり付けるほど低頭して信長の命に謝意を示した。


蜂須加小六はこれより身を起こし、織田、豊臣に続く徳川幕府の二百六十年を大名家として生き延び、明治期には公爵として明治天皇に仕える蜂須加家の初代となる。


蜂須加家においては小六の直系の血筋は江戸期に途絶えるが、皮肉なことに女系の血を通じて明治天皇その人の祖先とあいなるのである。


当然現代の今上天皇と皇太子徳仁親王の祖先である。


一方の前野将衛門は最古老の家臣として秀吉から信頼され、関白秀次の宿老を命じられたことが災いして秀吉の出自の秘密を守り通して秀次と前後して切腹して人生を閉じることとなる。


このあたりのことは物語の佳境で語られるはずである。


「さーて、さるよ ・・・・ 、おみゃーにゃ、ちーと頼みがあるでゃー、よーく覚悟して聞きゃー」


いよいよ表向きの太閤記の幕が切って落されることになるのであった ・・・・

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