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その三十六 土田御前

信長は父信秀の仇の片割れであった林美作守の首を取って清洲城に凱旋した。


斯波氏と織田信友を清洲城から排除した信長は、それ以降この尾張一堅固な城を居城としていた。


生まれ育った那古屋城は美作守の兄の林秀貞に城代を任せていた。


翌日にはその那古屋城を攻めた。


どこをどう攻めれば容易いか誰よりも信長が心得ているいる城である。


生まれ育った城だとて信長には何の未練も無かったが、今後今川や武田と争うことを考えると無駄に城を破却することも勿体無かった。


那古屋城を無傷で取り戻すために信長は惜しげもなく城下の町並みに火を掛け、那古屋城を裸城にしてしまった。


那古屋城に篭もる秀貞はもはや絶体絶命である。


その那古屋城の隣には信長の生母の土田御前が弟信行と一緒に住む末森城があった。


どこの大名家でもそうだが嫡男は幼い頃より母親から遠ざけられ乳母(めのと)や守役が養育にあたるのが常であった。


家督を継ぐべき嫡男には幼少の頃より帝王学を授け、次男三男とは明確に差別されていた。


しかし理屈ではそうと解っていても母親の心情としては手元に残った次男を偏愛する余り、家督までも次男に継がせたくなることがままあるのであった。


当主の父親が健在であれば一喝のもとに筋を通すものであろうが、こともあろうに信長の才覚を見込んで跡目に据えていた父信秀は病の床にあることに付け込んだ弟信光と林兄弟らに暗殺された。


凡庸ではあるが人柄が温和で御し易い信行が、既得権益に固執する家臣達に担がれようとすると政所の土田御前は彼らを諌めるどころか次男可愛さから美作守達の暴走を黙認してしまった。


織田家騒乱のすべての元凶は土田御前の優柔不断さにあった。


そのため多くの家臣や兵が無駄に命を落した。


反信長の急先鋒だった林兄弟の弟、美作守(みさかのかみ)が信長自身の手に掛かって落命した報に接してようやく母は己の愚かさを悟った。


ここで双方に矛を収めさせなければ最愛(・・)の子信行の命が無い。


母は僅かな伝手を頼って清洲に和平の使者を請うのであった ・・・・

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