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その十八 酒井大膳

将右衛門が斯波義統(しばよしむね)に語った信友討伐の策略は、実は筋書きの一部に過ぎなかった。


信友が挑発に乗って挙兵しようがしまいが信長は清洲を攻めるつもりでいた。


欲しかったのは信友を討つ "大義名分" だけである。


清洲に、『義統と信長は昵懇(じっこん)らしい』、との"噂"さえ広まってくれればそれで事足りた。


信長は密かに信友の家臣の一人を寝返らせていた。


信長に寝返ったのは信友の重臣で尾張小守護の酒井大膳(さかいだいぜん)


坂井は予ねて打ち合わせていた通り、『義統と信長は通じている』との噂が広まったのを見極めると、主の信友と義統の嫡男の義銀(よしかね)がともに清洲城を留守にした好機を逃さず守護所に押し入った。


義統は刃を突きつけ自刃を迫る坂井に必死で抵抗した。


「大膳!、そなた小守護の分際で守護である予を殺すというのか。

そんなことをしてみい。織田上総介が黙っておらぬぞ!、其の方も信友も破滅じゃ!」


坂井は何を云われても顔色ひとつ変えず義統に迫った。


「義統様、冥土の土産に明かして進ぜよう。我が主はすでに信友様ではなく信長様で御座る」


「 ! 」


ようやく義統は信長に嵌められた事を悟った。


「おのれ信長め、わしを利用するつも ・・・・ ぐうっ ・・・・ 」


坂井の刃が義統の腹を突いた。 


次に床に崩れ落ちた義統の首筋に刃を当てると深く切り入れ、義統は大量の血を噴き出しながら絶命した。


義統は自刃に見せ掛けられ殺害された。


酒井は謹慎を装い、そのまま己が所領に戻り固く門を閉ざした。


留守中に坂井が犯した蛮行を知った信友は狼狽した。


・・・・ いかに傀儡とは云え主君殺しでは周囲の支持を失う ・・・・


重臣の坂井が引き起こした騒動の責任は当然主君の信友に降りかかってくる。


しかも尾張各地にはすでに信長の情報操作により、信友と坂井が共謀して斯波義統を死に至らしめたとの偽情報が巻き散らかされていた。


今更酒井が勝手にやったことだと申し開いても手遅れである。


信友はこの混乱に乗じて攻め込んでくるであろう信長と好むと好まざるとに関わらず圧倒的に不利な状況で雌雄を決しなければならない窮地に陥った。


父義統を信友に殺されたと思い込んだ嫡男の義銀は、事態の張本人とも知らずに信長に助けを求めて来た。


これで信長は、自分を頼る義統を殺した信友を守護職殺しの謀反人として討伐する "大義名分" を得た。


周囲の支持を失い孤立した清洲城など単独でも落せた信長であったが、信長の目的は清洲城だけではなかった。


完全を期す為と偽り、父殺しの黒幕である叔父の信光を誘い入れ大規模な信友討伐軍を編成し瞬く間に清洲城を落城せしめた。


このまま東尾張は信長と信光との二頭体制になると思いきや、ここでも信長の密命を受けた酒井大膳の手にかかり叔父信光は討ち取られた。


旧主信友の仇と称して ・・・・


信長は父の仇を討ち果たした。


これにて尾張下四郡の支配権も守護所も、そして織田家の頭領の地位をも独占した信長は、いよいよ尾張統一へとひた走ることとなる。


この後、坂井大膳は信長の叔父を殺した信長の敵対勢力であることを金看板に、隣国今川義元に仕官を求め潜入することに成功するのである。


このときすでに信長の頭の中には、尾張統一にとどまらず、その先の伊勢、美濃、近江攻略の青写真がすでに描かれていた。


手始めは三河松平を今川の属国から解き放ち、北方の脅威である武田への防波堤と至らしめることであった。

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