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その十一 撤収

義元は北条と武田との関係改善に務め、上洛への地固めを着々と進めていった。


義元の正室は武田晴信(信玄)の姉であり、その後甲斐の国を追われた武田信虎(義父)を保護したことで、甲斐とは抜き差しならぬ縁戚関係を保っていた。


曖昧だった北条との境界線も策定して後顧の憂いを着実に消し込んでいった。


織田との勢力争いでも、すでに三河を手中に収め織田領の西尾張にも足場を築いていた。


今川優位に傾きつつある中、さらに織田を危機に陥らせる出来事が起こった。


信長の父、織田信秀の突然の死である。


三河を間に挟んで尾張領に近い頭陀寺城にあった藤吉郎は義元より先にその情報に接した。


藤吉郎は急いで蜂須加小六と前野将衛門と今後の方策を論じた。


「小六、将右衛門。まずいことになったぞ。間の悪いことに織田の大殿が身罷られた。

これでは如何に信長様とてしばらく尾張領内の取りまとめに苦心なされよう。

ここは大殿の計画を一旦切り上げてでも尾張に戻るよりしかたあるまい」


「左様でありますな。ここのところの今川はたいへんに安定しておりまする。

藤吉郎様がここに居られては織田の混乱に乗じて一気に上洛、という動きも有り得ましょう」


将右衛門はそう言って腕組みをして撤収の段取りを思案した。


「小六、其の方の首尾はどうじゃ」


「すでに三河への足がかりは付けてござる。

松平からも信頼の厚い簗田政綱という男をすでに取り込んでおりまする。

先々、今川との決戦に及んだとしても、三河が敵となることはまずございますまい」


「うむ、ここまで仕上げて撤収するははなはだ残念ではあるが、我らが築き上げた橋頭堡は必ず後日に信長様のお役に立つ。

将右衛門、後はどうやってここから怪しまれずに雲隠するかじゃが ・・・・ 其の方の策や如何に」


そう問われた前野将衛門は言いにくそうに。


「些か犠牲が必要にございます ・・・・ 」


藤吉郎の顔が曇った。


「この家の者たちに迷惑が及ぶと」


「如何にも」


「他に方法は?」


「ございませぬ」


「 ・・・・ せめて女子供だけでも類が及ばぬようにならぬか?」


「 ・・・・ 出来るだけそのように ・・・・ 」



藤吉郎たちは自分達が織田の間諜であったと疑われないように工作した後、忽然と今川領から姿を消した。


義元の心に野心だけを植え付けて ・・・・

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