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【電子書籍化】 目覚めたら悪役令嬢の中でした  作者: 氷雨そら
第3章 魔人の姫と公爵令嬢
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聖女と魔人の魔法



「なんだお前は?」


 デュランが怪訝そうに魔人うさぎを見つめる。


「アイリス……。逃げる用意をしておけよ?」

「まーくん、ロイは」

「ロイはフェリアスが助け出した。アイリスの瞳の色のネックレスを砕いて」


 ――――そうすると、フェリアス様を守ってくれるものは。


「今は、ここから逃げ出すことに集中しろ。俺が目覚めるまでここに来るなって言ったのに、約束破ったんだから、それくらいの言うことは聞いてくれ?」

「ごめんね……。わかった」


 といっても、どう逃げていいのか見当もつかない。


 その時、ポシェットにさっき作ったエリクサーがあることに気が付く。ここまで持ってくることができていたらしい。


 フェリアス様は、光魔法は最強の攻撃魔法を持っているって言っていた。


 エリクサーを思いっきり体に振りかける。フェリアス様の魔力。私の魔力は安定しないけれど、もしかしたらフェリアス様の魔力があれば……。


 フェリアス様を魔力暴走から助けた時の感覚を思い出す。二人の魔力が混ざって流れていくようなあの感覚を。


「アイリス……ちっ。この格好で時間稼ぎか?!」


 魔人うさぎが、紫色の剣を出す。

 可愛い魔人うさぎ。うさぎのぬいぐるみに合わせたような可愛らしいサイズの剣。

 どう考えても、デュランにかないそうもない。


「そうか……お前この間の。リーティアの」

「だまれ! 勝手にネタばらししてんじゃねぇ!」


 魔人うさぎは、飛び跳ねてデュランへと向かっていく。そして簡単に吹き飛ばされる。


「まーくん!」

「集中しろ! 魔力暴走を起こしたら、この空間ごと吹き飛ぶやつだぞ」


 私は、まーくんを信じることにした。


 フェリアス様の魔力と私の魔力が一つになって流れていく、あの感覚をもう一度思い出す。


 ――――仕方がないアイリス。本当に、すぐに無茶ばかりする。


 その瞬間、フェリアス様の腕が私の体にそっと絡んだ。そんな気がした。


「うん、出来る……絶対に」


 金色の魔力は、確かに私の中にある。フェリアス様の、白銀の魔力を巡らして、フェリアス様の魔法の制御力を……。


 その瞬間、私はとんでもない言葉を思い出してしまった。


『――――俺は、攻撃魔法の制御が得意じゃない』


 王都を破壊してしまうのも、攻撃魔法の制御が苦手故……。

 そう、フェリアス様は筆頭魔術師でありながら、攻撃魔法の制御だけは苦手なのだ。


 ――――フェリアス様はいつでもオーバーキルが基本なのだ。


「おい、アイリス! 集中しろ!」


 焦ったようなまーくんの声が聞こえる。


 ――――そこ、思い出さなくても良かったと思う。フェリアス様!


 白銀の光と、金色の光が混ざって周囲を包み込む。

 私は、魔力の波にのまれていく。


 ――――この感覚知ってる。幼いアイリスも経験した……。


「魔力暴走……」


 このままきっと、攻撃魔法は失敗してしまう。

 助けに来てくれたまーくんまで、巻き込んでしまう。


 諦めかけたその時に、魔人うさぎが「ちっ遅いぞ!」と叫んだ。


「アイリス?」


 少しだけ掠れた、そしてほんの少し気だるげな、フェリアス様の声が聞こえる。


 そっと唇に、柔らかい感触が重なる。


「アイリスなら出来る。……出来なくてもこのまま、ずっとアイリスのそばにいるから」


 蒼いその瞳が目に映ったとたんに、自分がどうしたらいいのかがはっきりしていく。そう、リーティアは光魔法が得意だった。たぶんこれは、魔人の世界の魔法だ。


「お願い……帰って魔人の国に」


 扉が現れて、開く。その先には、どこか懐かしい街並みが見えた。

 魔人の国と、私の故郷の景色は、とてもよく似ている。


 でも、私の今は遠い故郷には魔人はいない。それに魔法だってない。

 だからあれは、私の国とは違う。


 私が、帰りたい場所は。


 フェリアス様の瞳が、不安そうに目の前で揺れていた。


「アイリス……帰りたい?」

「帰りたいです」

「――――それなら」

「私、フェリアス様と一緒に、大好きなあの部屋に帰りたい」


 そういうと、フェリアス様は本当にほっとしたように微笑んだ。

 そのまま私たちは、もう一度口づけをする。


 気が付くと、フェリアス様と一緒にいつもの部屋にいた。

 横では、ロイがぼんやりと「どうして僕、ここにいるんだろう」とあたりを見回していた。


 そして、魔人うさぎはピョンピョンとその横で飛び跳ねていた。




 

最後までご覧いただきありがとうございました。


ぜひ『☆☆☆☆☆』から評価いただけると嬉しいです。

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『目覚めたら悪役令嬢の中でした』


html> イラストは木ノ下きの先生に描いていただきました。加筆改稿書き下ろしたっぷりの電子書籍版もどうぞよろしくお願いします(*´▽`*)
― 新着の感想 ―
[良い点] 短い剣で戦うまーくん、かわいい! 気だるげなフェリアス様もいいですね^_^ [気になる点] 「リーティアの」? まーくんは、リーティアの!ですね?!!
[一言] まーくん可愛い
[一言] おお〜!帰れた! ロイ君もまーくんも無事! 良かった良かった!
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