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【電子書籍化】 目覚めたら悪役令嬢の中でした  作者: 氷雨そら
第2章 断罪のあとの世界
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魔術師団長と聖女


 リリーチュールの、店の奥に案内された私とまーくん。重苦しい沈黙が流れる。


「……それで、これがどういう状況なのか説明してもらえるのかしら?」


 話してもいいのだろうか。ここまで来ておいて、リリーさんのことを巻き込んでもいいのだろうか。


 頭の中で、グルグルとそんな思考が巡るばかりで、返答をできない私を見て、リリーさんがため息をつく。


「少し失礼するわ?」


 そういうと、私の頭に手を乗せるリリーさん。思ったよりも大きな手は、私の頭をすっぽりと包んでしまうみたいだ。


 その瞬間、私が思い出そうとしていないことまで、多くの情報が溢れ出した。


「――――そう。そういうことなの。……それ以上に、だいぶ引くわ筆頭魔術師殿の執着に。よく平気ね?アイリスは」


 そう言って若干顔色を悪くしたリリーさん。


「勝手に記憶を覗いて悪かったわ。でも、私を巻き込むとか気にしないでいいの。魔術師団長として、生贄の件から守れなかったこと、お詫びするわ」


 そう言って、リリーさんは頭を撫でてくれた。その瞬間、フェリアス様がリリーさんの手首を掴む。


「ふふ。何かしら?」

「――俺じゃないからな?!」


 フェリアス様の顔をしたまーくんが、蒼白になって全力否定している。


「すごいわね。これだけ強力な魔法に縛られていても、まだ動けるの?これが意思の力ってやつかしら。興味深いわ」


 今、動いたのが、まーくんでないのだとしたら。


「フェリアス様!」


 蒼い瞳に紫の光を宿したまーくんが、少しだけ辛そうな顔をした。


「とりあえず、筆頭魔術師殿は無事そうだから、話を進めるわ」


 リリーさんが、フェリアス様の瞳を覗き込む。


「すごいわね。これが魔人の実力ってやつなの?ところであなたは、外に出られるのかしら?」

「……フェリアスが起きないとな?俺はこのままでも困らないけど」

「そうよね?制約なくそんな力が使えたら、とっくに扉なんて開いて、ここは魔人の世界になっているわよね」

「そうかもな?俺たちが別にそんなこと望んでいないとしても」


 リリーさんとまーくんの雰囲気がピリピリしている。戦い始めたりしないで欲しい。


「それが魔人の答えなの……。まあ、どちらにしてもそういうことなら、筆頭魔術師殿に起きてもらうしかないわけね?」


 チラリとリリーさんが私の方を見る。


「まあ、アイリスに頑張ってもらうしかないのよ」

「私にできることがあるんですか?!」

「……あるわ。でも失敗したら、永遠に夢の世界を彷徨うのよ?それでも」

「やります!」


 食い気味に答えた私を少し驚いたように見つめて、そのあとリリーさんは大声で笑った。


「あはは!怯えているだけのお姫様かと思ったら。その目!その返答!良いじゃない気に入ったわ」


 そんなに笑うところだったろうか。でも、笑い終えた後「覚悟があるならばついてくるように」と低い声で言ったリリーさんの雰囲気は完全に変化していた。

最後までご覧いただきありがとうございました。


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『目覚めたら悪役令嬢の中でした』


html> イラストは木ノ下きの先生に描いていただきました。加筆改稿書き下ろしたっぷりの電子書籍版もどうぞよろしくお願いします(*´▽`*)
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[一言] リリーさんすげぇ
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