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【電子書籍化】 目覚めたら悪役令嬢の中でした  作者: 氷雨そら
第2章 断罪のあとの世界
20/74

魔人の少年


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 リリーチュールからの帰り道。

 手を繋いで歩いていると、急に強く抱きしめられる。


 こ、こんな大通りで?!

 何故か通行人は誰もいないけど!


「あ、あの。フェリアス様?!」

「……見られている」

「えっ?」


 そういえば、まとわりつくような視線?

 肩の上をよじ登って、ポフリと私の腕に収まった魔人うさぎが、私たちの間に入り込んでくる。


 魔人うさぎの毛も何故か逆立ってモフモフになっていた。


「魔人……今からお前にかけた魔法を解く」

「は?俺を元に戻したら世界を滅ぼすかもしれないぞ?」

「アイリスが無事ならそれでも構わない」

「ああ、そういう奴だったな……。魔人の方が常識があるんじゃないか」


 魔人うさぎを元に戻すなんて、考えられる原因は一つしかない。


「フェリアス様!私も」


 そこまで言って、優しげに細められたフェリアス様の瞳に捕らえられる。


 私も……何ができるというのだろうか。


「心配しないでアイリス。すぐ帰るから」

「──っ。心配くらいさせて下さい!」

「──嬉しいな」


 まるで時が止まってしまったみたいに、微笑むフェリアス様の顔を見つめる。

 溢れそうな涙、それだけは流すまいと唇を引き結んだ。


 時が再び動き出す、フェリアス様の表情は笑顔のままなのに、纏う雰囲気が一瞬で変化する。


「行ってくる」


 頬に触れるだけの口づけを受け、一人取り残されて、呆然と空を見上げる。


「……ほら、ことが起こる前に帰るぞ」


 振り返ると、夢の中にいた銀の髪にアメジストの瞳の少年が、憮然とした表情で手を差し伸べていた。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 屋敷にはルシアが待っていてくれた。

 なぜかいつものお仕着せなのに、その腰には剣が下がっている。


「……ルシア?」

「アイリス様。お守りいたしますから部屋の中に。それからアイリス様に不埒なことをしたら即討伐しますよ。そこの魔人」

「只者じゃないと思っていたけど。さっきのオーナーといい、フェリアスの周りは常識外れが多い」


 なるほど、強くないのは私だけなのかもしれない。

 私にも悪役令嬢チートは与えられないのだろうか。

 命懸けの修行というやつにチャレンジした方が良いかしら。


 そんな思案顔の私に、何を思ったのかルシアが「たぶん、アイリス様はそのままが良いと思います」と言って優しく微笑みかけた。


 そして、私の手を引く魔人。ただのフェリアス様色のうさぎのぬいぐるみは、今は私の腕の中に。


「守ってやるから心配するな。アイリス以外の人間までは責任取れないけどな」

「まーくん……」

「この姿の時は、マーリンと呼べ」

「やっぱり本名でもまーくんなんだね……」


 ひどく嫌そうに、まーくんがこちらを見つめた。





最後までご覧いただきありがとうございます。


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『目覚めたら悪役令嬢の中でした』


html> イラストは木ノ下きの先生に描いていただきました。加筆改稿書き下ろしたっぷりの電子書籍版もどうぞよろしくお願いします(*´▽`*)
― 新着の感想 ―
[良い点] 魔人うさぎはマーリンの姿になってもかわいいですね♪ フェリアス様どうかご無事で!
[一言] マーリンて アーサーもいたりして
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