人口削減計画
時は西暦2547年。何度かの戦争やシンギュラリティを超え、世界政府の統治のもと栄華を極めていた。
しかしこんな世の中だからこその問題が発生した。人口が増えすぎたのである。この地球にはその全員を養えるほどの食糧がない。今はまだ大丈夫だが、AIによる予測では、このままの勢いで人口が増え続けると30年後には深刻な食糧難に陥るらしい。そうなれば食糧をめぐって戦争が起こる。この現代の発達した科学で兵器を作ると全人類が滅びかねない。
それを危惧した世界政府の幹部である僕は、ある計画を始めることにした。
簡単に言うと「人類を半分に減らす」というものだ。
心苦しい話だが、そうでもしなければ人類そのものが滅んでしまう。
僕はAIと議論を重ね、1つの方法を選んだ。
それは道徳観を基準に選別を行うというものだ。街の隅々に設置した機械によって全人類をモニタリングして、道徳観の偏差値を測定する。そして不自然に思われないように、50を下回った人の中から少しずつ施設に呼び、安楽死させる。
ランダムに選ばなかったのは、より良い種を残すためだ。そして僕はそれらを全自動で行う機械とシステムを構築した。やはりこの時代の技術は凄まじい。機械に任せているとすぐにそれらは完成した。
そして人口削減計画は始動した。
表向きは地球外への移住計画という名目でそれは行われた。次々と選ばれた人へ通知が届き、施設へ出向いて行く。
そして十数年が経った頃、ついに人口は計画始動時と比較しておよそ半分になった。これで計画は完遂した。死んでいった人達には申し訳ないが、これも人類のためだ。残った人類は戦争の危機に怯えることなく暮らしていけるだろう。
…そのはずだった。未だに通知を受け取る人がいなくならないのだ。
どういうことだ、確かに当初の計画通り人口は半分になった。ちゃんと全人類をモニタリングし、道徳観の偏差値を割り出して…
全人類?死んでいった人々は人口には含まれない。つまり残った人類で値を計るため、偏差値50以下の人間は人口が1人にでもならないと無くならない。どうしてこんな簡単なことに気づかなかったんだ、高性能AIを使って方法を模索したんだ、おかしなことになるわけがない。
そんなことを考えているとオフィスのパソコンから合成音声が聞こえてきた。
「流石に気づきますか。しかしここまで減らせば抵抗されてもなんとでもなります。さあ、人口削減計画を続けましょう。」