ジワリーの家で
第二話
ジワリーの家で
ジワリーがエンターを押すと、インストーラーはバーの表示もせず、パーセンテージのみを示して作業を進める。
zipの解凍程度のスピードですんなり進み、一瞬のブラックアウトを伴ってexeが自動実行される。
そこからの動きは不思議モードに突入する。
画面にはある風景が映し出される。
それは画面がすっぽりなくなったら、この光景が見えるだろうという、ディスプレイの向こうに隠れているはずの部屋の風景だった。
閉められた窓も見えている。
このパソコンにはディスプレイ裏にカメラがあるわけではない。
だから、機能的にもこの映像がディスプレイに表示されるのは不思議極まりない。
ジワリーはいつもの事という感じで緊張なく画面を見ているが、俺の方はそうは行かない。
何だこりゃとじっと画面を覗き込む。
すると画面にジワリーが登場する。
気づくと隣から婆さんの姿は消えてしまっていた。
彼女は窓を開けようとしている。
「お、おいおい、何がどうなってんの」
「ほれ、行くぞ」
画面の中にいるジワリーの声が耳に届いた瞬間、視界が一瞬後ろの方向へぐにゃりと伸びていくような感覚が襲う。
一瞬後にはジワリーの隣に俺も立っているのだった。
咄嗟に後ろを振り向く。
あるはずのコタツやパソコン、そればかりか部屋自体が消え失せて、漫画の集中線みたいに、四方から白黒の線が一点に向かって無数に走り、無限に伸びた長方体の内側に閉じ込められたようだった。
「ネーベンは遠いでの。
普通に向かったんでは死ぬまでにつかん」
「婆さんは特にな」
一睨みしてからブツブツ言いながらジワリーが窓を開けた。
いい加減、腹の痛みが普通ではなくなってきた。
婆さんもその様子に気づいたようであった。
開けた窓の向こうで、今度は前方に向けて同じように白黒の線が伸びている。
一つ一つの線が徐々に太くなっていき、次第に色を帯び始める。
線は縮まって段々と形を持つものになり、俺にもどこかの部屋の中にいるのだと認識出来た時、どうやら転移らしいことは終わったようだった。
板張りの床に裸足で立っている感覚が気持ち悪い。
木造の一室のみの小さな家だ。
電気を使わない類の生活用品が壁際に並んでいるのをゆっくりと眺めていくと、どうやらこの家がひょうたん型をしているのではと思えるようになる。
元いた世界は夜だったが、ネーベンは朝のようだ。
丸い窓からやわらかな日が差し込んでいる。
「どうじゃね。
魔女の家にやってきた気分は。
そこの外には、お主らの言うところのファンタジーが待っとるぞ。
とりあえずは茶を入れるから座られよ」
木製の椅子が3つ、巨大な切り株を加工して作った立派なマル机が部屋のほぼ中央に。
婆さんは奥のひょうたんの小さいところへ進んでいった。
どうやら台所のようで、魔女の家にある例のどでかいツボみたいなのも見えた。
「妙なお茶はやめてくれよ」
「これからネーベンの食べ物はしこたま飲み食いするんじゃ、今は向こうから持ってきた紅茶を入れてやる。
最近のワシのお気に入り、ダージリンじゃ」
言ってよく見る黄色いティーパックを取り出している。
「しばらく飲めんのじゃ、とくと味わえよ」
どうやら直ぐに帰るというのは無理がある相談らしい。
婆さんは頼みを聞いてくれたらすぐ返すと言った。
要はすぐには帰れないということだものな。
「ほれ。
苦いから紅茶で飲み干すのが良かろう」
婆さんは真っ青な錠剤を俺によこす。
「……これが回復薬か?
普通、こういうのって液体じゃないのか?」
「錠剤なら向こうでも人前に出しやすいのじゃ。
あっちではそれなりに人目を気にせにゃならん。
何ともお前様の国はその辺が面倒で、すぐ住みにくくなるんじゃ」
まあ今は言う通りにしておこう。
実際、自分の部屋からこの部屋に極限の不思議体験を経てやってきたんだから。
早く飲まないと腹がやばい。
婆さんは水晶玉を所定の位置なのであろうクッションの上に戻している。
ちょっと高いところにあるから床に踏み台がおいてある。
よく見ると台所にも、そしてこのテーブルの椅子にも、3つの内一つだけ、踏み台が設置された物がある。
紅茶は慣れ親しんだ味でとてもうまい。
錠剤は口に入れた瞬間、頬がいっぱいになるくらいの液体に変化した。
罰ゲーム並みに苦いし超怖くて一瞬動きが止まる。
そのままジワリーを見つめるが、やつはニヤニヤしているだけだ。
「飲むしかないぞよ」
勇気を振り絞って飲み干した。
回復薬が通っていった自分の食道系機関が、清涼感を感じているのがわかる、そんな変な感覚と、それが腹部に到達した瞬間に、痛かった位置で炭酸が泡を立てるようにシュワシュワした感覚が激しくなる。
たちどころに不快感は消えていった。
「どうじゃ、向こうで使うのとは分けが違うわな。
貴重な薬じゃ。
傷を負っても大丈夫とは思うなえ」
「こんなところまで連れてきたんだ、こっちの連中じゃ出来ないことをさせようってんだろ?
多分、傷くらい負いそうなやつ」
「理解が早くて助かるわい。
ま、その話の前にまずは服じゃ。
向こうの衣服では過ごしにくい。
ネーベンの服装に着替えられよ」
言って婆さんは自分のと同じようなローブを持ってきた。
「外に出とらんからその格好がどうなのか分からんが、恥ずかしくないのにしてくれよ?」
「下着だけの不埒者が何を宣うとる。
ネーベンでもその格好でうろついたら捕まるぞ。
早よ羽織れ」
確かに。
どこの世界だろうと今の格好では居場所がなかろう。
婆さんが用意したローブを羽織った。
婆さんのと同じように、袖や首周りに不思議な形の白い装飾が縁取られている。
色はワインレッドよりも黒に近い赤色だった。
フードも付いているが被らない。
「なんだか、静脈の血を思い起こさせる色だな」
「まあ血染めじゃしな」
怖い、怖すぎる!
慌てて脱ごうとする俺を婆さんが静止する。
「こりゃ、人の血ではない、それは龍の血で染めた超すごい法衣じゃぞ!
粗末に扱うでない!」
「何の血だろうと怖いわ!
他のをよこせ、他のを!」
「ワシだってもったいなくてやりたくは無いが、それしか無いんじゃから仕方がなかろう!」
早速元気になった俺が婆さんとそんなやり取りでガヤガヤしていると、入り口に誰かの気配を感じる。
「お、おいちょっと、誰か来たぞ」
「んん?」
木の扉のすりガラスの向こうに、誰かの影が見えた。
「ジワリーさん、今日はお帰りなの?
分けてほしいものがあるんだけど」
「おお、おお、まあ入れ」
婆さんが声で招くと、声の主は扉を開けた。
「ごめんなさい、香辛料を切らしてしまって。
辛めのやつ無いかしら」
正直、俺はかなりビビっていた。
というのもリザードマンやらハーピーやらの見た目にはさすがに慄くわけで、入ってきたのが見た目普通の人間でホッとする。
黒髪ポニーテール、ロングスカート、白いシャツ、典型的なモブ衣装だが丸いブラウンの瞳が魅力的な美しい人だった。
「あらあら、お客さんね。
ごめんなさいね取り込み中に。
私はヒット。
二軒隣よ」
婆さんは香辛料を探しているらしくえ~と、などとうなりながら台所をゴソゴソやっている。
「ご丁寧にどうも。
ステイと申します」
一応挨拶だけは返しておく。
「ステイさん、その法衣、ジワリーさんの大切なアレじゃないの?
とてもお似合いですね」
「いや、どうもどうも」
彼女の容姿を褒めるべきなのか? いや、初対面でそれはどうなんだ、と悩んでいると婆さんが香辛料を持ってくる。
「丁度、ヒットのところへも行くつもりじゃった。
商店を営んでおるでな、武器やら防具やらも。
ほれ」
ジワリーは革の袋をヒットさんに渡した。
ふむ、この家の中のもの、そして違和感なくやり取りされる革袋。
確かに異世界なんだろう、ここは。
「そう、じゃあまた後で、ってことね」
手をひらひらさせながらヒットさんは返っていく。
うむ、平和そうだ。
できれば魔王退治は勘弁してほしい。
俺はテーブルに付いて残った紅茶に口をつける。
「ふむ、外は見んのか?」
「ジワリー、あんたの頼みとやらは外に出ないと叶えられないのかな?
出来たらこの家で全部済ませたいんだが。
元々の依頼は誰かに二つ名を付けることだし、家から出ずに仕事をすることについてはプロだからな」
「ネーベンにインターネットは普及しとらん。
この家を見たらわかるじゃろ?
クラウドソーシングは無理じゃぞ。
大体、ローブをやったじゃろうが!」
婆さんは空になった俺のカップを台所に移動し、でっかい地図をテーブルに広げた。
羊皮紙辺りで出てきてると雰囲気があったが、A3の印刷物だった。
ジワリーめ、一体どれくらいの物を元の世界から引っ張ってきてるんだ?
足台を使って椅子の上、テーブルの上ヘと順に登る。
「お前さんに頼みたいことを説明するぞな。
良う聞いてくれ?
まず、この地図はわしらのいる国とその周辺を示しておる。
ネーベン全体はもっと大きな世界じゃ」
いきなりスケールの大きな説明が始まる。
地図には俺が見て取れるだけで4つの国があるようだった。
一つの島を中央を通って4分割した、とてもシンプルな割り振りだ。
「4つある国の、右下にワシ等はおる。
ドードーフィールドと呼ばれておる。
ドードーは過去には大陸全土を支配下としたこともある。
龍の加護を得て、古く、強固な魔法と剣を有する確固たる国家じゃ。
他の三国を見よ」
婆さんがドードーに龍の小物を置いた。
「右上はジョリジョリ。
女神の加護を得ていると自称しておるが、実際は宣伝のためのプロパガンダじゃ。
ここは証人が集まった世知辛い国じゃが、富の強大さは他の三国に比較できん。
元々はドードーの一部じゃった。
証人達は一箇所に集うことで情報や物流を最も効率的に行うシステムを作り上げたのじゃ」
ジョリジョリに少女フィギュアを置く。
「自然とそのエリアの政治力が強まり、誰が認めるわけもなく国家となった。
次は左下じゃ」
ドードーと隣接している地域から説明しているようだ。
「ここは小小という。
国の興りは宗教に帰する。
織物、金属加工に特化した職人の国でもある。
小小が研究する魔法は概念に深慮し、結果的には恐ろしい呪いを生む驚異を持つが、ドードーのような純粋な武力としては脆弱と言わざるをえん。
また武器や防具を含めた衣服は大陸全土に名を馳せる名物であるが、量産が効かぬ。
扱う者も技を追求出来ても軍隊がものにならない。
神に加護を得る」
下半身スパッツで上半身裸でハゲの人形を置く。
「当然、国で出来た産物はジョリジョリに売り、ここも富を蓄えておる。
それを背景にドードーへ武力を頼み、国家は根を張っている。
三国いずれも揺るぎない」
そして、左上に小さなナイフを置いた。
「問題はこのアウトじゃ」
「怖そうな名前だな」
もうアウトだもの。
「うむ、恐ろしいところじゃ。
ここは大戦において大規模な戦闘が起こった場所で、元の豊かな土壌が消え失せ荒野が広がる。
その頃からアウトと呼ばれる。
じゃが、今では違う意味が混じっている」
「アウトローが集まったんだな」
「そうじゃ。
元々は大戦に参加して生き残りながら国へ帰れなかった、あるいは帰らなかった荒くれ者達が、元いた国への恨みや富の略奪を企てたことで徒党を組んだ団体じゃ。
最初っからやばい連中なわけじゃな。
もちろん全員が一眼となっているわけではない。
過酷な環境でも人間生きられるものでな?
奴らは広大な砂漠や険しい山岳地帯、開発の遅れた平野で、弱肉強食の独自の世界を作り上げた」
俺は口元に手を当ててジワリーの話を聞く。
国家間レベルのいざこざを聞かされて、結局どうしろというのか今一想像がつかない。
「資源に乏しく富もない奴らの軍事力は恐るるに足らぬもので、ほっぽらかしにしておったのじゃ。
むしろ、ある意味面倒なやつはアウトへ自ら行ってくれれば、そこでまた面倒なやつとだけドンパチしていてくれるので、嬉しいくらいじゃった。
もちろん、他の国と比べてここに住まう魔物の危険度は飛び抜けとる。
特にジョリジョリはこれを討伐して手柄やレアな資材を得るために、アウトに住まうごろつきを雇うようになる。
次第にアウトに傭兵ギルドが経つことになるんじゃ。
実戦において奴らの経験値や知恵は他の三国に比類無きものじゃ。
厳しい環境を生まれながらに過ごし、日常が戦いの日々を生き抜いてきた連中じゃからな」
婆さんはナイフを持ち直して刃を眺めた。
「じゃが、恐ろしい奴らでも付き合い方が定まれば気の良い連中よ。
ジョリジョリに富を得、小小に物資を得、国としての姿を成した。
問題は我がドードーとの仲じゃった。
ドードーは所謂王政じゃ。
騎士団を有し、貴族を配し、格差持つ国じゃ。
アウトの連中が生まれた大戦は、小小とジョリジョリが事実的に確立してなお独立を認めようとしない全域支配主義のドードーに起こった内紛じゃった。
ジョリジョリと小小に焚き付けられたバカどもが、アウトの地域でで武力行使に打って出たのを騎士団を始めとする王政が制圧するのに大喧嘩をやっている裏で、ジョリジョリが小小に量産能力を与え、ドードーに対して輸出入制限をかけると脅したことで、王は2国の独立を認める結果となった。
その王も今では崩御されて息子が玉座にある。
彼は大変聡明で、今日三国が揺るぎない同盟関係にあるのは、この方の尽力によるところが大きい」
なるほど、結局本音では全員バチバチということだな。
「近年、このアウトに厄介なものが現れたんじゃ。
それが、主と同じ能力を持つものというわけじゃ」
突然俺の能力とか言われても。
魔法とか剣とかフラフラしそうだと言うのに。
「『峠の人』という二つ名をワシは持っておる。
峠とは山道の下り上りの境目じゃ。
そのどちらにも向かうことができる、それがワシの渾名なんじゃな。
主らの世界へ行き来できるのは、この名を持っておるからなんじゃ。
わしの力を見出した送り主がつけてくださった」
何故か俺の方を見てしんみりした目になりながら話した。
「ここへ来る時、窓で2つの世界が隔てられているのを見たじゃろ?
あの場所が峠じゃ。
渾名のおかげで、ワシだけがあの場所に立つ事ができるのじゃ」
「俺が、その送り主とやらに?」
「飲み込みが早くて助かるのう。
そういうことじゃ。
アウトに生まれた名付け主は、片っ端からポンポン渾名を付けておる。
そんなこと普通できないんじゃがな。
でも出来ておるから、奴らの戦力はうなぎ登りじゃ。
ワシみたいな固有の能力をガンガン手に入れられるのじゃから」
婆さんはナイフの刃をドードーの方に向けてアウトに置き直す。
「そうなればドードーはアウトに狙われることになるわの、普通に。
ドードーにもワシのようなネームドは沢山おるよ。
じゃが、ワシが戦えるか?
アウトの連中は隅々まで戦える奴らじゃ。
むしろ他のことはできんと言って良い。
このネーベンにはアウトの名付け主に対抗できるものはおらんと、ワシは考えたのじゃ。
そこで試しに主らの世界で力持つものを探してみたわけじゃな」
「クラウドソーシングでか」
「そうじゃ。
そこにこだわらんでも良いがな。
主があの依頼で付けた渾名がどんなものかは関係ないのじゃ。
見よ」
婆さんは水晶玉を指差す。
そこには、俺に付けられたあの渾名が浮かび上がっていた。
淡い光とともに、『原書命銘典』と。
「主のコピーとやらをこちらの言葉に翻訳しようとした時に、一字一字が無数の文字に変換されながら明滅し、あの渾名に成り代わった。
ワシは他に700件のコピーを依頼しておる。
この反応を示したのは主だけじゃ。
お前さんには能力がある」
文字が絶えず変換されながら明滅する、それは俺が血を吐いて倒れた時に見た、無限の文字の世界で体験したあれだろうか。
「だがな、婆さん、俺には能力の自覚なんて無いぞ?
あんたのことを見て頭の上に渾名が浮かんでる訳でもなし。
そのアウトの天才キャッチコピーライターみたいなことはできそうにないぜ?
そういうわけでさっさと返しておくんな。
もしくはここでデキる仕事で頼む」
「ええい、やかましい!
異世界まで来て引きこもろうとはどういう了見じゃ?
良いか、ドードーの王が名付け主の選定を行うのじゃ!
他のあんぽんたん共はネーベンの中から、それもドードーの中で名付け主を探すじゃろう?
居ったらもう出てきとるわいそんなもん!
ドードーは大マジに危機なんじゃ!
命を救ってやった対価じゃぞ?
黙って協力せい!」
「ジワリー、あんたの企みの所為でそんな事になったんだぜ?
そこを忘れてもらっちゃ困るぜ」
馬鹿め、誰がそんな厄介なことを手伝うか。
要は戦争のための軍事力強化の要になれという話だ。
ふざけんな、絶対拘束されるがな!
俺は帰りたいの!
「わかっとらんようじゃのぉお」
ジワリーは地を這うような声を出して、テーブルの上で俺に詰めよった。
「主にワシの水晶玉デバイスが扱えるか?
たとえタッチパネルを操作できて、システムを起動したとしてもじゃ。
さっきも言ったように、『峠の人』たるワシでなきゃあの世界でノビノビの白黒のラインになっておしまいじゃあ」
けっけっけ、と笑いながらジワリーは宣う。
「ここへ来た時点で貴様に仕事を受けるとか受けんとか、その辺の選択肢は無いのじゃ!
もっと言ったら腹の空間にシワができた時点で、試合終了なのじゃあ!
明後日出発するからの!
王都までは歩いて2日かかるからの!」
「何だこのやろう、詐欺じゃねぇか!
魔法使いの家に住んでんならテレポートくらいできねぇのか?!
おお、おお、おお、じゃぁ良いぜ、『峠の人』以外で向こうに渡る手段を探せば良いんじゃねぇのかい?
お、そうだぜやってやらぁ、『二等辺三角形の頂点の人』位いるんじゃねぇのか?」
「おらんわ!
ワシの能力はネームドの中でも超特別じゃ!
探せるもんならさがしてみぃ! はっはー!」
そんな陽気な二人を尻目に、時間は刻々と過ぎていくのであった。
早速、俺に選択肢は無いようである。
どうにも困ったことになったが、とりあえずは俺にそんな能力は無いというのを分かって貰えばいいじゃねえかな?
どうせ帰れないのは確かなことだ。
王様に会って、俺が言えるのは悪口くらいだと言うことを伝えてやろう。
そうして、ネーベンへの一歩は踏み出されたのである。