―承―
「ここはどこだ?」
少年は考える。少年がいたのは石壁に覆われた小さな部屋だった。
「俺さっきまでコンビニにいたよな。」
少年の声は不安の色を浮かべていたが、その不安を打ち消すように大きな声が扉の向こうからきこえてくる。
「成功したんです!国王様早く来てください!」
「おいおい、これで何度目かわかっているのか?一日に五回、それが五十日も続いて居る、さすがの儂ももう諦めておる、世界中の冒険者をかき集めた魔王討伐軍の計画も今進めておるんじゃ。もうよい。」
「それが成功したんです!ぜひ見てください!」
そういった声が、聞こえたかと思うと扉がゆっくりと開かれる、そこにいたのは豪華なマントに身をつつみ、白いひげをはやしたおじいさんと、ボサボサの髪が目にかかった男だった。
「こやつが勇者だとでもいうのか?たしかに伝説通り黒髪に黒と緑の上下を着た少年ではあるが、」
「そうなんです。少し弱そうというか、そもそも戦えるのかって体格で、顔も見た目は悪くはないのですが、目力というか覇気をまったく感じないのです。」
「これは成功なのか失敗なのかいまいち判断に欠けるの。」
「一体何の話をしてるんですか?」
そういって黒髪を真ん中で分け、黒と緑の上下を着た少年が二人に問う。
「ああ、『ようこそ勇者様、この混沌に沈んだ世界を救えるのはあなたしかいないのです。どうかどうかその聖なる力の宿るあなたに、この世界を救っていただけませんか!』ということじゃ。わしからもよろしく頼む。」
「てことは俺異世界に召喚されたってことか。すげーこんなことあるんだな。」
「つきましては、さっそくその勇者の力で冒険に出ていただきたいのですが、少し問題がありまして、」
「なんでしょうか。」
「今世界中の冒険者をこの国の隣にある聖王国ルーンに召集しているのですが、そのために世界中の国々が出資をしても金がたりず、」
「え、てことわ。」
「はい、この国もその魔王討伐軍に多大な出資をしていて、今は勇者様に渡せるかものがあまりないのです。」
「つまり俺の冒険は少しハードなものになるのかな。」
「とりあえず1000ゴールドほどは渡しますので、あと護衛としてこの国の騎士団のうちの上位三名をつけさせますので、それでどうかよろしくお願いします。」
「うん、結構イージーモードかも」
「そういっていただけて感謝します。それでは、こちらへ。」
そんな会話が繰り広げられた後、少年は二人に背中を押されながら部屋の扉を出て行った。
※
それから一年ほどが経ち、
「ここが聖王国ルーンか、」
そういった少年の姿は立派な竜の鱗できた鎧を身にまとい、騎士剣と騎士盾を背中に背負っていた。
「ここに世界中の冒険者がいるのか、ちょいと腕試しといきますか。」
その後ろには三人の騎士が少年を守るようにして並んで立っていた。
※
わーわーわー!闘技場内で歓声が湧く。
「この戦いの勝者は、勇者テンだ!」
わーわーわー!
「これにて優勝は勇者テンに決定です!」
わーわーわー!
「さあ、優勝者のテン様にお話しを伺いましょう。」
「えーと、っ私はこれからもまだまだ強くなります。そしていつか、魔王を討ち倒します!」
「だから皆さん私に協力してください。この魔王討伐には皆さんの力が必要です。それぞれ力を合わせて、魔王をボコボコにしてやりましょう!」
わーわーわー!
大歓声が闘技場を包み込む。その様子はテンが闘技場を退場してからも、しばらく続いた。
※
旅の準備が整った一行、ではなく、一軍はその歩みを進める。いろいろな装備を身に着けた冒険者集団はとてもカラフルで、―これがこの世界に悪しき力を及ぼす魔王を倒すために集まった一軍だ―ということを示していた。
一軍は荒野の真ん中を行く。その周りには多くの魔族の死体とごく少数の冒険者の死体でうめつくされていた。
「我々はこれより魔王城へと突撃する。みんな準備はいいか!」
オーーーーーー!
「いくぞーーーー、突撃ーーーー!」
荒野の中心に大きくその姿をみせる巨大な城からは不穏な空気が漂っていた。
※
魔王城にて、
「ファースト様大変でございます。」
豚の姿をした魔物が言う。
「なにかしら?今は城内の戦力のバランスを考えるのに手間取ってるのよ。」
頭に二本の歪な角を生やし、黒と銀の髪留めをした金髪の女性が豪華な椅子に腰を下ろし、足を組んで悩んでいるような様子を見せている。その身には真っ黒の上下にマントをしていて、その金髪は椅子からはみだし床にまで広がっていた。
「それが、大変なのです。相手の最前列を食い止めていたもの達が一斉に苦しみだして、それで、先頭の四人が今、この部屋のすぐそこまで迫ってきています。」
「勇者の戦域、ホーリーフィールドね。あそこで使うなんて馬鹿じゃないかしら。一度使えば永続的にあのままだけど、体への負担は尋常ではないはずよ。それなのに私に会う前に使うなんて、なめられたものだわ。」
「そんなことを言ってる暇じゃないんです、この部屋に来る前に食い止めないと、」
「わかっているわ。まずは落とし穴よ。一階の入り口まで戻すの、すべての廊下を開放しなさい。あと落下の衝撃に弱い連中は各部屋に入るようにいいなさい。それで時間稼ぎにはなるはずよ。」
「了解しました。すぐに連絡します。」
「はあ、よくもまあこれだけ戦力を集めたことね。いい趣味してるわあの王様たち。」
そう言って女は大きな部屋で一人溜息をついた。
※
そのころテンたちは魔王城の最上階の廊下を進んでいた。
「あれ…もうすぐ魔王の…いる部屋につく頃…だとおもうん…だけどやけに魔物が少…ないな。」
テンは二人の騎士に肩をかしてもらっている状況でいう。
「部屋の数もだんだん少なくなってきたし、ひとまず入ってアイテムでも探すか」
そういったあとテンたち四人はアイテムをさがすため部屋の中に入る。
するとなかには大量の魔物が部屋の中に立っていた。
「やばい、ここにきてモンスターハウスを当てちゃうのか。でもこれを全部倒せばそれなりの経験値稼ぎになるかな。」
そういってテンは腰の剣を抜く。四人対五十体の戦いが魔王城のとある一室で始まった。
※
「ふう、なんとか倒せたけど、これといってめぼしいアイテムはなかったな。」
そういって、テンたちは部屋のとびらを開ける。
「うおっ、なんだこれ。」
テンが扉を開けてすぐ目に入ったのは下の階の壁だった。
下を見てみると一階での大乱戦が目に入る。
「そうか、だから部屋にあれだけいたのか、こわっ、だれだよこんなこと考えたやつ。」
そういってテンたちは廊下の端にある可動式の金具に足をのせてピョンピョンと駆ける。
「さあいよいよ魔王戦だ。」
※
「よくぞ、ここまできたな、勇者よ。」
「ああ、待たせたな、魔王。」
「たしかお前この戦いの前に戦域の魔法を使っていたな。そしてさっきも。」
「ああ、かなり体に負担はあったがおかげでここまでこれたよ。」
「そうか、永続禁忌魔法、ダークフィールド」
「ぐあ、くそ、なんでお前が」
テンたちの体に重くのしかかる疲労感と苦痛が押し寄せる。
ファーストも自分の頭を軽く押さえながら言う。
「これはきついな。これをお前は二かいここで使ったのか。やはり、勇者というのも伊達じゃないのか。」
「はは、ほめてくれてどうも。」
「しかしこれはあれだな。いつかお父様が言っていた舐めプというやつかな。」
「お前、それ、どこで」
「そんなことは関係ない私の魔法で消し炭となれ。大魔法流星群」
空から突如とし現れた岩の塊が城を襲う、城の頂上から大きな翼で羽ばたく魔王ファーストの姿が見える。長い金の髪が月の光にてらされて魔王の姿がより美しく照らされる。
ああ、なんてうつくしいのだろうか、そう思いながら少年、テンは深い眠りについた。
※
「ああ私ちょっとやりすぎちゃった。」
魔王はそう言ってがれきが散らばる荒野中心に降り立つ。
「お父様、私やりました、勇者を倒しましたよ。あとは、邪魔者のいなくなった今ならあいつらを」
―ぐさっ―
「油断したな」
黒いローブをみにまとった男が言う。
「さすがにこれは予想外ね。最後の悪あがきをしてみましょうか」
そういってファーストは黒い影が天にまで届く柱を目指す。
「あっけないものね、でも次の私は黙ってないわよ。」
辺りは薄暗闇の中そこら中に燃え広がる炎があたりを赤く照らしている。転がる死体に火が燃え移る。
そこには二本の光の柱と一本の闇の柱が天をつらぬいていて、
ループっていいな
かなりのハイスピード展開、読んでて思った、内容入ってこない。