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もうひとつの影2

俺のいた場所を乗っ取られた。

そう考えが至ったのは、「彼」が神社から出ていって見えなくなった時だ。

多分家へ帰ったのだろう。レンは衝動的に動いていた。


走る。

公共交通機関は使えないだろう。

だから自分の足で、家へ向かう。


本来ならば徒歩と交通機関では勝負にならないだろう。

だが今は纏をしているおかげで、「彼」がこの場所に戻る前に先に着けた。

そう。レンと名乗る前まで住んで使っていた自らの家。

纏をしたまま玄関先で待つ。鍵を使って開ける手もあったが、死角から何かがあっては困るからそのまま待った。


数分したら俺と同じ顔をした「彼」が帰ってくる。



予想通り、玄関先で会う。


「率直に聞こう。あんたはいったい誰だ」

纏をしたまま、警戒し、尋ねる。

「「誰」か…。君こそ、誰なんだい?」

同じ顔をしているもこいつは不気味な笑みを浮かべただけで、そのまま家へと入ろうとする。

その行く手を力で止める。扉の螺子が悲鳴を上げた様だが、そんなことは後。

「ここは、俺の家なんだ。誰とも解らんやつを上げたくないんだが」

纏のバカ力で蝶番が歪んだのか。こいつが開けようとしても開かない。

「それは「僕」の言いたい事なんだけど」

ふざけんな。

「この家は僕の所有物だ。君にどうこう言われる筋合いはない。それよりも壊したようだが、どう責任を持つのかい?」

「知った事か。俺の家なんだから壊しても訴えても意味無いだろ」

纏の全身鎧の俺と普通の見た目のこいつ。

周囲の視線は恐らく此奴の味方をするだろう。

コスプレをした不審な奴が言いがかりをつけて、絡んでいるのだろうと思われているだろう。

不審な奴は此奴の方だが、近所の主婦たちは、あたかもこいつが普通で、俺が異常と言いたげな顔をしていた。



「い・い・か・げ・ん・は・な・せ」

「そちらこそ、離してもらえないかな」

俺の元自宅、そして現在は俺のそっくりさんの家の玄関先で一時間程続いている。

ドアノブを握り、どちらも手を離さないから金属部が悲鳴を上げている。


「この世界にもう君の存在する場所は無い事は理解しているはずだ。だが何故、その現実を受け止めない!」

「諦められっかよ。勝手にあっちに連れてかれて、死ぬ思いを何度もしてやっとこさ戻って来れたのに、俺の居場所はアンタに奪われてるしで、はいそーですか。って言えるか?普通!」

「君が認めなくても世界自身が決めた事だからね。僕にどうすることもできないよ」

世界。

勝手に切り離され、その空いた穴を補完するかの如く俺の存在、その居場所にいたこいつ。

それよりも重要なことが判明した。


「腹減った」


力が入らず、ドアの前でしゃがみ込んでしまった。


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