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黒色2

「……………」

違和感を覚えた。

手のひらを見ると、普通の目には見えないが、纏をしている今は見える。

金色に輝く鎖が絡みついている。

その鎖の根元にはタクミがいる。

無造作に引き、千切る。

タクミは目を見開き、引き摺られて座の位置から落ちた。

落ちて姿が消えると、周囲をまとわり付いていた不可視の壁が薄まった。

そして、反対の腕を振るう。

マサトは一瞬粘るも、それだけ。

タクミと同様に、姿を失う。

正面に玄。後ろに鳥。周囲に魔神。

今も殺そうと攻撃の手は止まらない。

それでも傷一つすらできない。


邪魔だなぁ。


周囲の戦闘音で誰にも聞こえないだろう。それくらいの声で呟く。

それだけで鳥と玄は苦しそうな顔になり、魔神は吹き飛ぶ。

先程からの攻撃は全て空気の振動のみで無効化していた。

苦しそうながらも、まだ何やら小細工をしているのだろう。鳥と玄は意地でも離れないという顔をしていた。

溜息しか出ない。


黒い纏は四方神や聖闇といった属性は無い。しいて言うなれば「無」属性と言える。


『だからこそ、他の「属性を持つ」魔神やつらと違って、厄介なんだよな』


ふと、聞いたことの無い声が耳元でした。

周囲の建物という建物が無い今、外で降っていた雨はレンだけでなく、周囲の魔神や鳥と玄にもあたっている。


『やっと、準備できたの?遅いよ』

『どうせ周囲の火を鎮火させるまでに手こずっていたのだろう』

『もういい。早く済まそう。ボクたちだってぎりぎりなんだしさ』

『待ちくたびれた。さっさと終わらせようよ』

…すまぬな。


『いいって。感謝はこれを「しずめて」からしてよ』


ふふ、とどこか余裕のある声がした時、レンの身体が空中に固定された。

「な…」

驚いた?と問いかけてきているような雰囲気がレンの周囲に漂う。

…今だ!


イユイが上空から、タインは地上から。ハゼは正面、アルは背後から自らの持つ最高威力の力を使う。

四方から魔神の最強の呪術をまともに受けて、流石に無事とは言い難い。

呪術の爆発の隙間から、落ちる影がある。

真っ黒の纏が所々剥がれ落ち、焦げた様な燻りを引き連れ落ちた。


受け身をまともに取らず、頭から地上に落ちる。

土煙が広がるのと同時に鈍い音が聞こえたものの、煙の奥には立ち上がる影が見える。

『嘘、でしょ…』

『馬鹿な』

『これでもダメなのか』

『他に手段は』

『私にはもう打つ手は無くなった』

…どうするのだ。これから



「策は全て尽いたようだな」


はっきりと聞こえる声でレンが話す。

雨はトルハが操作していた為、今は止んでいる。

「何でこの世界に来てしまったのだろうな」

その言葉に事情を知らない魔神は疑問符を浮かべる。

仮面の下では寂しそうな微笑みをしていたのだが、仮面が阻んだため魔神達はその顔を知らない。

その瞬間、レンの上空の雲が切れ、太陽が顔を出す。


異様に暑い。雨により湿度が上がっているとはいえ、この暑さは湿度だけではない。


『こんなに太陽、近かったっけ』

タインが呟くと、聞こえた全員は暑さの理由を理解した。


星が動いた。


よく見ると確かに近い。ごく小さな点にしか見えなかった黒点もはっきり見える。

光の粒子の振動により、暑いよりも自分の体を構成している物質が振動し、発熱している。

水であるトルハはその影響を一番に受けていた。

『まずいね』

そう呟くと、姿が見えなくなる。

気化し、別の場所から媒体となる水を集めてくる。

他の魔神も無事ではない。

炎のアル、地のタインは動く余裕はあるものの、それほどある訳では無い。

風のイユイ、闇のハゼはその場から動けない程ダメージが蓄積されていた。


『貴様、答えろ。何故太陽を近くへ持ってきた』

「「彼」が教えてくれるんだ。こうすれば、少しの間だけども、俺のいた元の世界へ戻れる「道」が開けるんだって」

『「彼」?』

「ああそうか。聞こえないのか。この声が」

『……だめだ。壊れたのか』

ハゼが溜息と共に小さく呟く。

ちぇっとつまらなさそうなイユイは既に立てきれず、膝を折っている。

『もうちょっと早くに遊べばよかったかな………』

残念そうな表情を浮かべた後、周囲で渦巻く熱風に巻かれ、風となった。

『イユイ』

残る魔神はアル、ハゼ、タインの三名。トルハは戦線離脱。イユイは存在維持が不可能となり消滅。

打つ手が限られていく。

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