王都へ
既に一度は「人間」として死んだ彼ら魔神は「死」に対し敏感になっているのだろう。
俺が死にたくないと言った時、タインはビクッと身体を反応させていた。
魔神は柱への贄として捧げられた「人間」。
レンは次元を越え規格外になったとはいえ、今は「人間」だ。
魔神になった時は、贄から自動的に外れる。「贄」は「人間」でしかできないのだろう。
それでも、俺は……。
*
王都へ着くと最初は状況が掴めなかった。
至る所から火の手が上がり、空を黒く染め、雨を濁らせていた。
雨だけで鎮静化するわけもない火は、勢いを増す一方。
その燃え尽きた家屋や、倒壊されたと思う建物の残骸の上を走る。
「死ぬ覚悟無く、来たこと、怒るかな」
『きっと特大の雷が落ちるだろうね』
「それだけで済めばいいのだが」
『こちらに飛び火しなければご自由に、どうぞ』
『朱に同意だ』
タイン、タクミ、鳥、マサトが、俺の言葉に各々で返す。
『朱、白。それは回避不能だろうと思うが』
空の上。雲の上で時折、黒い光と赤い光がちらつく。
ちらつく度、地上では建造物等が、破壊されていく。
「……今はまだましだ。星自体にそこまで目立った被害はいっていない。建物が緩衝剤になっているのだろう。人間の無事は保証できないが」
タクミの言う通りで、衝撃で地が揺れているも、地割れなどは起きていない。但し建物の倒壊に巻き込まれた人がどうなったか…。
『そんなことで心に細波を立たせるな。迷惑だ』
「平常心でいなきゃいけないのは、この状況を見てできるものではない気がするんだが」
*
中央に進むにつれて瓦礫や火災部が増えてくる。
無属性の纏だからか、炎属性の初期能力なのか、今まで炎に触れても火傷のやの字も無かった。
だが、今それが無い為高温の中にいる。纏の上から炎により肌が焼け、皮膚の感覚が曖昧になっており、纏を解くのが恐ろしく思う。
外からと中からちりちりとする。
平常心でいろと言われても、いられる状況ではない。だが、保たねば「お使い」の最終が完成しない。
この環境で平然としているのはレン以外の人物。人間は一人もいない。
それが余計に焦らせる。
上空ではまだハゼとアルが戦闘している。
衝撃により爆発、引火、さらに誘爆。建物は吹き飛び、瓦礫となり降り注ぐ。
段々攻撃が強くなっているのが見えていないのだが判るほど。
目的の場所に辿り着き、鳥、タクミ、マサト、玄がそれぞれを表すだろう記号の書かれた場所に立つ。立つと同時に、本来の姿に変化すると、レンを陣の中心に来るように言った。
『待って』
と、タインは指示に素直に従おうとするレンの腕を引き、止めた。
『気を付けて。僕たちみたいな繰り返しをしないよう、祈っているよ。神は信じていないけど』
手を両手でしっかり、握り、離し、見送る。
中央に向かうレンの背中を観つつ、外に出る。
今迄火の手がすぐそこまで迫るほどであったが、勢いが収まり始めている。
『トルハか』
雨。それもかなりの量で、土砂降りどころか、災害クラスの量。その量の雨を以てしても、炎と闇の魔神が作り出した炎の全てを消し去るには至らない。
『タイン?聞こえているかい?聞こえているなら声は出さずに肯いて欲しい』
すぐそこからトルハの声が聞こえる。姿は無い為、この雨自体がトルハ自身なのだろう。
軽く頷くと、しっかりと気配を感じられるようになった。姿は見えないままだが。
『どうしたんだ。レンから消されたと聞いていたんだが』
どうも彼自身はそのまま生きていることを神に知られることを避けたという。
『おかげで火事の消火に引っ張り出されているわけだが』
『そっか』
『とりあえず、あのバカな二人を止める。それからでも間に合うだろう……今回は』
そこで会話は止まった。
『どうやって空気の凄い薄い所まで行くのさ』
もしかして地の力でどうにかしろという事ではないだろうな、と考えていたところで新たな声が頭上から聞こえた。
『それは私も手伝うよ』
その声の主は浅黄色と、本来の色を持つ正装でふわりと降り立つ。
『やー間に合ってよかった』
と開口一番、笑った。
タインとトルハは沈黙した。
『『イユイ……』』
にっこりと笑みを深くする彼女が、来た。
※ここのところずっとサブタイトルが浮かばない…




