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炎と魔神5

『何故、こんな状態になるまで気付かないのか。それが我にとって不思議でならないのだが』

止血し、なんとか会話ができるまでに回復してきた。流石神様。数時間で此処まで回復するのか。

手当は必要かどうか不明だと思ったが、

「神域で傷付いた場合は、そのまま存在へと影響を及ぼす。地ではあまり関係の無い事だが、神域ではかなり存在に係わってくるのだぞ」

『その割に話し込んで忘れてたけどね』

「タイン!」

きっとタインを睨む彼女が言ったのだ。

そろそろ彼女の名前を聞いておきたいが、鳥に「証し」を貰う事になった。


『すまない。今では新たに力を譲渡することが出来ぬ』

しかし、予想外な事になった。

「力の譲渡?」

『「証し」の事だ。紺や白からは既に譲渡されておる』

もしかしてもしなくても、槍に刻まれていった模様の事か。

「正しく言わせてもらうが、模様を刻む際に己の力を埋め込んでおるのだ。模様を槍に刻むことは可能だが、力が伴わない物になる可能性の方が高い」

『他の証しは力が込められて無くても平気なのだろうが、炎属性はそうとは言えないね。レン自身の力の源なんだから』


それからなんやかんやと話が続いていった。

結果として、模様だけを槍に刻み灰色のまま北へ戻り、玄の証しを貰う。その後に王都へと向かう事になった。



『そのような力で、儂の力を制御できるのか?おのの力すらも止める事も出来ぬ若造が』

再び、北の大地。

玄に会いに神殿に行くと、何故か違和感覚えた。

北の街に寄らずに南の神域内から北の神殿内部へ直行したため、その違和感を知ることが出来なかった。

最奥の祭壇。そこに俺と小さくなった鳥と、タイン、闇の神。対面にいるのは玄。

タクミは玄に追い出されたようだ。先に王都へと向かわせたと言っていたが。

「レンの力は抑えることができたんだから、さっさと証しをやりなさいよ。そういう約束をしていたんでしょう?」

「ちょ」

『………………………仕方ない』

仕方ないって。

どうよ!と盛大に自慢げな顔をする彼女の反応を見る玄は本当に仕方なさそうにしていた。

『では槍を貸せ。刻んでやる』

半ばひったくられるようにされた槍に、紫色の模様が刻まれていく。

刻み終わると、玄は一息つき、槍を返してきた。

ふとその刻まれてきた模様を見ると、規則的なようで、不規則的であった。

じっと見つめると、鳥が、

『その文字は見覚えないか?』

言われるとそうでも無い様だが、何処で見たかあまり覚えが無い。

『確かに、あれは見たというよりも、読んだだからのう』

読んだ?



証しを無事にもらうことができ、外へ足を向ける。

神殿から出ると、目を疑った。

「なんだこれ」

アルや南の街での出来事があったためかなりの時間が経っていたのだろうが、おかしい。

辺り一面雪と氷、吹雪しかなかった神殿付近は変わりないも、街のある方角が妙に明るい。

至る所で空を黒く染める筋が見えた。

『…………!』

タインの顔を見ると蒼白だ。

「起きてしまったか」

こうなることを知っていたかのような言い方をする闇の神は、何かへの覚悟と、何かへの悲しみを含む表情をしていた。

「レン」

「はい」

その顔の放つ雰囲気につられ、すぐに返事をしてしまった。

「贄になる覚悟はできたか?できていないのならば我はお主を捨て行く」

正直、贄と言われてもいまいちピンと来ない。それはイユイから話を聞いてから、今も変わらない。

「タインはコントロールが出来ぬだろうし、出来たとしても王都周囲への被害がひどくなるだけだ。我が運ぶのは今だけだ。どうする」

そんなこと、言われても。

「無いならないでよい。奴を叩き起すだけだからの」

「それは」

『確かに、アルがこの状態にしたというならハゼを起こすしかないのか』

タインも苦い顔をする。

何故だろうか。

『アルとハゼが喧嘩したことは過去に何度もある。喧嘩程度で周囲の国は更地と化したんだ。「喧嘩」程度でその状態だ。アルが今回本気であるだろうと判る。ハゼは…どうかは判らない。判らないから結果がどう動くか判らない』

「人類が壊滅する程度で済むかどうかすら、のう…」

『この世界の崩落すら考えに入れた方がいいのだろう』

世界の崩壊。

「星を支える「大黒柱」の無い今はあの二人の「ちょっと本気の喧嘩」ですら星が壊滅するのではと言われておるでの…」

おいおいおい。話がデカくなってきているぞ。

軽い喧嘩で国が亡び、ちょっと本気を出すと星の壊滅。星ってそんなに脆かったか?

『あの二人が相当規格外なだけだ』

ですよねー。

「その状況にしたら、我はその只中に行こうというのだ」


「覚悟が無いのは変わらないよ。死にたくないし」

「それがお主の決めた事なら、強制はせぬ。勝手に朽ち果てるがよい」

彼女はそれだけを言い、姿が消える。


普通の人は、死んでくださいと言われても簡単に、はいそうですかと言えるものではない。


死にたくないのは誰だって同じだ。生き物ならば。


そう。「生き物」ならば。

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