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炎と魔神4

証しをふんだくると言い張る二人と俺は、走って活火山の上にある神殿へ向かっていた、

「流石に暑い」

最初の頃はこんな暑さだったか?それとも季節の移ろいによるものか?と考えていたところに、前を走っていた闇の女神が急に止まる。

慣性の法則を無視したような不自然な止まり方で、勢いを殺し切れていない俺は背中に突っ込んだ。

「この暑さはあの朱にしてはおかしい。何かあったと考えて動いた方がよさそうだ」

俺とタインの二人にそう告げると何事も無かったかのように再び走りだす。


徐々に見え始めてくる神殿だが、何所か雰囲気がおかしい。

神殿に近づくほど、その違和感に気付く。


神殿に傷が走っている。

それもかなり大きい。傷の深さも相当だろう。そんなものが一本二本どころではなく、何十本と、ざっと見ただけでもかなりの数が目に入る。


『神殿に傷?一体誰が……』

驚いたままのタインの言葉に、

「神域に入れるものは限られておる。それにこの気配は知っておるだろう?」

『!まさか』

「分かたれた力と、本流の力まで奪う気か…!」

二人は出し惜しみ無しと言えるような速さで神殿最奥へと走る。

置いて行かれた俺は、見失わないようにするだけで精一杯だ。

ウサギならばそんなことは無いだろうが、もういない。自分で自分の足で追いつかなければならない。

そんなこと言っていても、差はどんどん広がっていくだけだが。もともと地属性魔神のタインと闇属性の神様で、俺だけ普通の人間の身体なのだ。追いつけという事が無理だろう。



必死に走り辿り着いた神殿の奥は、神殿とは思えないほど崩れていた。

辺りの壁や柱は穴が開き、罅などが全体を走っている。その傷を囲う様に火の手があり、それに沿って煤で一部は黒くなっている。

しかしその惨状にしたと思う人物の姿は見えない。

床一面に赤黒い物が飛び散っているのが見え、かなりの量で普通の人間では失血死するほどだろう。

この場にいないのであれば神域へと入っているはずだ。

だが、俺は今のままでは纏はできても無属性しかできない。

鍵となる「炎」が無い為、出来るか不安だったが、意図して神域へ入った時の事を思い出し、意識を集中させる。


北のあの時と同じ様に体中に負荷がかかり、視界に入る景色も変化する。


変化したはずだ。

負荷が軽くなり、閉じていた眼を開けると、神殿の最奥とあまり変わりの無い状況になっていた。

「神域、だよな」

変化があるとすれば、タイン、闇の神様、鳥、それに

「あいつは…!」

俺から鍵のちからを持っていった姿が見えた。

タインと神様は膝を折り、かなり深い傷を負っている様だが、鳥の方がそれよりも酷い。

鳥は炎の神というはず。最初に槍を貰った時くらいしかはっきりと見て覚えていないものの、顔色が悪いということがはっきり分かるほど弱っていた。

『遅かったな、器。俺の用事は終わったぞ』

そう言いタイン達を見下ろす。

『ハゼが手を貸したか』

ふんと膝を着く二人から視線を俺へ向ける。

『まあいい。それよりも、貴様。これからどう動くつもりだ。故郷からこいつらに引き離され、力も俺に奪われ、どうする気だ?』

視線がまっすぐ俺に突き刺さる。その目から視線を逸らそうとしたくてもできない。

『このまま逃亡するもいい。それか奴らの言う通り柱になるか。どちらを選ぶにしろ、王都に向かう事になるだろう。そこで待ってやろう。数年なぞ、今までの時間に比べれば短いしな』

「何、を言って…」

『これから貴様のとる行動だ。今は退いてやろう。考える時間も必要だからな。それでも少ししかやらぬぞ。短い時間とはいえ、俺の気も短いからな。王都に着いた時に無事に生き残っているか判らんがな』

言いたいことを言って姿が消える。



「王都?何故…」

「そこに「大黒柱」があるからだ」

闇の神が話した。

「元々そこで柱を建てたのだ。柱を目印に集まった人間たちが自らの街をつくるまでは良かった。そこから先に、人の数は増え、土地が不足し始めた。都の中心に聳え立つかなりの面積を占める柱に目を付けるまでは早かった。土地を欲す人と、守らねばならぬ事を知る人と争いが起きた」

『僕たちは柱の意味を知っていたから、守る側に立って、抵抗していたんだ。でも……』

「ウサギとヒカリの持つ「星の力」に引かれていった人類は、彼奴等の嘘を信じ、魔神を否定した」

『確かに、何百年前まで人間で、柱の贄にされたなんて誰が信じれた?信じてくれた人は漏れなく処刑されたよ。ヒカリ自ら姿を現してまでさ』

諦めと悔しさと悲しさ、タインに至っては涙声になっているようだ。

『そんなウソの歴史が今までずっと続いているんだ。真実はもう知っている人間はいないだろうね』

「それをハゼはどうにかしようとしているのだが…アルの奴はどういった考えで行動しておるのか一切解らぬ…」

力無く首を左右に振る。

「アル?」

「教えておらなんだったな。アルはお主から力をとったあいつよ」

『魔神の中で唯一、ハゼと殴り合えるんだ。僕ですら傷一つ掠りもできないのに』

前に王都で行っていた「彼」というのが、「アル」なのか。

『一応、アルは僕よりも前に魔神になったみたいだから、そこそこ実力はあると思っていたんだけど…あそこまで強かったとは思いもしなかったよ』


話を聞く限りでは、戦闘時、俺を庇いつつハゼとやりあっていたというのだが。

その時直に見ていないから俺には分からない。

どうすればいいのか。結局、なる様にしかならないということだけだ。


この後、消えかけの鳥を見て、慌てたのは俺たち全員だった。

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