炎と魔神3
街で休んで数日。
俺がこちら側に来て最初に保護された場所を借りていたところに、ノックがした。
ノックを街の人たちは気を使ってるのかいないのか解らないが、一切しない。
その中でノックしてきたという。
第六感的な危機感知も警戒しろと言っている気がする。
こちら側の玄関にのぞき穴という便利な代物は無い。
ドアチェーンも無い。あるのは簡素な鍵のみ。
おそるおそる、扉を2センチほど開け外を見る。
そこにいたのは、数日前に、ウサギとヒカリの欠片を俺の中から消し去った人物だった。
*
『何故、貴方がここにいるんですか』
闇の属性の神様は、部屋にある椅子の上にちょこんと座っていた。
タインはその神様に扱き使われていた。
俺と相対するような位置をとって、話し始めた。
「朱から話は聞いています。「お使い」をしているということも。しかし、彼はお使いのその先の未来の事は話していたように思えず、こうして直に話をしに来たのです」
「お使い」。それは、俺が元の次元に戻れないため、旅して周っていいと言われ、「ついでに」四方の神殿に寄ってほしいという事。
「そのことが、どうかしたんですか?」
そういえば、神殿は既に周り終えたが、鳥からその先の話を一切聞いていない。
「我の闇の力でお主の中の炎の力の逆流を防いでおる故、手助けが出来ぬ」
すまぬと頭を下げる彼女は神様というよりも、人間よりも人間らしい雰囲気をしているように思えた。
「この世界を形作る「属性」の種類は判るな?火水風土と聖と闇。その六つだ。お主の中には今、水、風、聖と我の闇。火はハゼが持っていったから無いのだ。しかしお主自身の炎属性が他の属性と融合し、暴走をしておる。先に聖属性が馴染んでおったおかげで我の闇と反発しておれる。そこの所だけは欠片に感謝してやるとするか」
目の前に出されたお茶の湯気をじっと瞬きせず見つめつつ話す。
彼女?を何と呼べばいいのだろうか。聞きたいも、この話の腰を折るなという雰囲気をタインが放っていた。
その属性の暴走が「炎」となって纏から漏れ出ていて、玄がそれを抑えなければ許しを与えない。簡単に言えばそうだが、彼女はそうではないという。
「奴ら自身、自分の力を与えた者の制御ができませんでした、などと、互いに牽制しあっている中で弱みを出したくないのであろう。北はそのことを見抜いておったようだの」
静かにお茶を飲む顔は、「奴らの考えそうなことよ、は!」っと笑っている。
だがふと何かを聞いたようで、急に真顔になり、
「それは笑っても良いが、お主、レンと言ったか?ハゼが急に会いたいと言っておるが、どうするのか?」
『唐突だね、本当に。彼の行動は…』
しかし。
「俺はまだ、炎の制御もできていないし、玄からも証しを貰ってない。そんな状態で王都に行けないよ」
首を振る。
「炎の力は、朱に文句を言ってやればよい。何なら我も付いて行こうぞ。我に盾つけるものならついてみよというもの」
ころころ笑う彼女は見た目より中身はすごく長い時間を生きているのだと感じさせる。
「何か思ったか?」
「いえ、何も!」
歳の事を気にする表情は少女の様だが、目つきは女性だ。この関連の話は藪蛇になる。突かないのが無難か。
「とりあえず、「元に戻る」こともできないんだから、ここでできることをして見ようかと思う。だから「お使い」は続けようかと」
そうかと残念そうな顔になる二人だが、決まれば早い。
『なら善は急げ。早速鳥から証しをふんだくりに行こう!』
…いや。証しはそういうふうに奪う物じゃなくて、貰う物なんだってば。
聞いちゃいねえ。
しかも二人共。




