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炎と魔神2

以前から何度か繰り返してできた「分離」。

それが今なっている状態。

意識だけは俺にはある。逆に言えば意識以外は何も手が出せなくなっている。

対峙しているタインは大地の属性の恩恵は無くとも、ウサギと渡り合っている。

纏はまだ灰色のまま。


『その身体から出て来い』

ずっとそう言っているも、わかっているのだろう。

ウサギとヒカリの二人は欠片であり、その存在がぎりぎりの中で維持されていることを。

その受け皿である俺を殺さない限り、出てこれないほど深層にいることを。


『僕はレンを殺したくはないんだ。あんた達にだってその「器」を失いたくは無いはず。「次元を越えし者」は簡単に代替えが聞くような代物じゃないって判っているはずだ』

剣戟の速度が速くなったり遅くなったりを繰り返しているも、今は先ほどから既に日没で、時折の火花でしか視界が無い様な暗さだ。

それなのに打ち続ける二人は、この時予想していなかったのだろう。


重低音の鐘の音が辺りに響く。


しかし「南」の街には鐘などは無い。金属が活火山や南の領地周囲の熱で変形しやすいから。

止むことの無いように、重なる様に響く。

南の民には聞こえていないようで、騒ぐような雰囲気は無い。

その事に安心していいのか判断しかねるまま鳴り続ける。


『……まさか。来たの?』

畏怖と驚きと恐怖を混ぜあわせたような顔をしたタインが誰に言うでもなく呟いた。


その時、世界の色が反転した。



鐘の音が、色の反転と同時に驚いたも、次に見た光景によって上書きされて気にも留めなかった。

「…炎の魔神」

そう。タインがハゼと呼んだ魔神が目の前にいた。

『ハゼ君?どういうことだい?君がこんな能力ちから持っていたって知らないのだけど。隠していたの?魔神同士では隠し事は』

しないって決めてたよねと言う前に、ハゼらしきものに遮られた。

『我は今、一時的に彼に承諾を得て此処に来ておる。時間が無い故、手短にするぞ』

我、と言ったハゼ?はハゼではないのだろう。しかし、タインに味方し、ウサギに攻撃をし始めた。

ウサギは慌てたらしく、持っていた槍を遠くへ弾き飛ばされる。

飛んだ槍が刺さる。

そちらを追って視線が流れた瞬間、頭を鷲掴みにされた。

力を籠められるその手から、なにか訳の解らないものが流れ込んでくるようで、ウサギとヒカリが抵抗しているのが見えた。「見えた」のだ。イメージなのではなく、そのもやもやを追い払おうとしている。だが二人の影が次第に薄れていき、ついには消えた。


消えたと同時に解らないものも消え、身体の支配も無かったようになった。

『これで我の許しをやれる。受け取れ』

飛んで行っていた槍を、俺を掴んでいた反対のその手に持っていた。


槍に黒い模様が付け足されると、その姿が砂の様に崩れ始めた。

『此処までというか。ハゼ』

まあいと言ってのけることはすごいのかどうなのか。

そのまま、姿か完全に消えると、神域も全て消えた。



神域から戻った場所は一番近い所にあった村の門前。

呆然としたが、

『闇の存在である彼女ならこれくらい朝飯前だろうね…』

ぽつとタインが言った。

そして地に戻って来た為、腹の虫が騒ぐと、二人して笑った。

「飯位食わなきゃな」

『そうそう。体力を戻さなくちゃ。「彼女」に許しを得たとはいえ、ハゼ君本人は君の事快く思っていないと思うし。いずれ決戦を申し込まれたりして』

「不吉なこと言わないでくれよ!」

騒いでいると、塀の外を巡回してきた兵士に見つかった。

『というよりも、保護されたと言った方がしっくりこないかな?』

簡単に質問をされ、答えると、門の中に入れてくれた。鳥に噴石に混ぜて飛ばされたときに町全体に俺の特徴を話されていたらしく、すんなりとした。タインは連れという事になり、一緒に入った。

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