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氷の神殿2


ここは時間軸が、地上や神域よりもねじれてるんだ。だから時間がいくらかかろうと外の時間経過は無い。

『だから、諦めて』

にっこり笑って言うタイン。

魔神は神と敵対しているのではと思っていたが、敵対しているのは最近、といっても百年単位だが、出てきた比較的新しい魔神だけらしい。

『昔に遡れば、まだ知性の残っている個体はまだいるんじゃないかな?僕も最近は出不精になっているから分からないけど』

イユイなら知っているんじゃないかな。あの人は旅好きみたいな風だし。

タインの言う最近は何年前からの事だろう。聞いてみるのも怖い。

「……ちょっかいなら、前にかけられたことあります」

『へぇ。どこでだい?』

「確か、西に向かう前…」

あっと思い出した。タクミが拉致された時。

「それよりも前に一度、王都で」

『!』

驚いた表情を一瞬したも、すぐに平静に戻った。

『そっか。イユイが王都に、ねぇ…あのイユイが』

薄く笑っているも、目が笑っていない。

『こうしちゃいられない。さっさとてんこ盛りになって、鳥から証しをふんだくってくるよ』

座した姿勢からいきなり立ち上がり、叫ぶ。

「ふんだくるって…」

呆れるしかないだろう。

『証しが無いとちゃんと均衡をとれないからね。そんな不安定な所に亀の強い力を入れたら、入れただけで本当に死んじゃうからね』



そうして、タイン曰くてんこもりを纏うことのできるようにする、特訓が始まった。

ただ、座って、疲れたら立ってを繰り返していた。その間には鎧の色は何度も変わった。

しかし同時に他の色にすることはできない。

『どうしたものかな』

タインも打つ手がないかと考えてくれている。

この場所に送られてかなり経つも、進歩は芳しくない。

外ではどうなっているのやら。ここから戻るときに神域との時差は無くなると言っていたが、地との時差はそのままなのか。

腹は減らない、疲れはあまり感じない。感じたとしてもすぐに治る。時計も無い為、どれだけ過ぎ、地ではどれだけ日にちが過ぎたか。

『こうなったら』 

タインが何かをひらめいたと、顔を上げたら、脇に抱えられていた。

えと疑問を口にする前に、

『てーい』

とかなり高く飛んだ。

高所恐怖症の人からすれば、そうでない人でも心臓に悪いだろう。

魔神の跳躍力はそれほどまでに凄まじい。凄まじかった。

一言感想をと訊かれたら、恐ろしかったと言うだろう。



『大丈夫?』

立てなくなっている俺にしゃがみ込んで聞くタインは、心配そうにしている。

大丈夫じゃない。一言くらいかけてくれ、頼むから。

言いたくても、今は言えない。

自分の事で手一杯なのだ。

飛んで着地した先は、氷の洞窟の外。つまり時間が普通に流れている場所。

属性制御が一切できていない状態で、纏をしたまま。炎に飲まれかけているのだ。

『これは結構まずいね。今までの器に無いほど…』

俺を抱えていたタインは、洞窟の外に出てすぐに炎に耐えきれず、落とした。

今迄と同じ身体の軋みと、炎の熱。どちらかではなく同時。

『仕方ない!ちょっと、痛いけど、我慢してね』

一体なにを。

飼い犬にそれいけーとボールを投げる感覚で、俺は投げられた。

北の神殿よりも北にある場所から。

そんなことよりも纏から暴走している炎の方が辛い。


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