雪と氷4
「魔神が元は何だったか…?」
そう。と頷く。
しばらく考えている様だが、首を振り、
「わからない」
と言った。
『イユイの言う通り、本当に今回の器には何も話していないんだね…。このまま戻ってもハゼ君怒るだろうな。それは嫌だなぁ』
独り言が多いのか。
『このままだと世界が壊れるってことは知ってる?その為の贄が「器」だと言うことも。それすら知らないとなると、その首ちょん切らなきゃならないんだけど』
「柱が折れて、危ないことは知っているけど…」
そこまでいって、贄が器だと理解する。
『それで、器が耐えきれなくなった時、その身、その身体に詰め込んだ力が暴走。そして、ポン』
ぱっと両手を開く。
『器はこの世界の住人で、一定周期にある「神の選定」に選ばれた者。君は偶然かもしれないが、僕たちからしたら傍迷惑しかない。だってそうでしょ?奇跡だ、神に選ばれた、なんだって言って、こんなことさせているんだから。僕らは柱への贄になった後の用済みになった滓。ぶっちゃけたこというと、元人間。スッキリする言い方でしょ。本人の意思に関係なく、強制的に人間の枠を外されたんだ』
「…………」
『それに、僕たちから見ても君はこの世界の「人間」の枠を初めから越えていたみたいだね。そこを視られたってわけだね』
正面から、俺の事を観ようとする目。
『本来は、違う場所?うーん。分からないな…まあいいや。この先、どう転んでも、後悔の無いようにね。この先に進むなら、特に。』
薄らと消え始める。
「まて、どういうことだ!」
『そのまんまの意味だよ。この一帯の雪はある程度減らしてあげるから、せいぜい足搔いて見せて』
頑張ってね。
そうして、気配が消える。
気が付くと、道と橇の周りの雪が減っていた。
「なんだったんだ…」
イユイみたいに名前があるのなら聞いておけばよかったと思っても遅かった。
ボウとする意識の中でそんなことを考えていた。
遠くにウタ達の声が聞こえる。
そんなに離れていた覚えはないのだが。
そのあと、倒れていたと、話を聞くまで目が覚めなかった。




