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緑島5

白に認められ、力を貰う。今まで同様槍に刻印されていく。

『この力は扱いを一つ間違えると自分に牙を剝くぞ。その所しっかりと考えるのだぞ』

神域を出る前、そう言われた。

白はタクミのように外に出るとは考えておらず、

『今のところはこのすみかを直す所から動こうかと考えておるからの』

と優しそうな瞳をしていた。

毛並みは、触れさせてもらったら、もふもふはまだ衰えていないようで、ふかふかしていた。

別れる直前にジッと見られるのが恐ろしく見えたらしい。

『また、遊びに来ればいい。それが無理なら我を呼べ』

だが、呼ぶときは緊急時くらいにして欲しいが、とも言っていた。本格的に社を修復するのだろう。

グロン達に話して協力してもらおうかと考えたが、やめておけと言われた。

『この島自体時間干渉の結界が掛けられておるのだぞ。そちらで判りやすくすれば…浦島太郎だったか。そのような事になってしまうぞ』

恐ろしい事をさらっと言った。

「じゃあ、俺は大丈夫なんですか?」

『我は三番目に干渉の強いと言われておるからの。その辺の心配はせんでいい』

ほっとするも、白よりも強い時間干渉するのは。

『玄と…あいつか』

あいつ?誰だと聞くも、はぐらかされてしまった。

『さっさと行かんと玄の奴何言いだすか判ったもんじゃないぞ』

追い出されるように外に出た。そこは。


入るときは膝丈の碧い草原だったはず。なのに今は。

「なんじゃこりゃー!」

叫びたい。いや、叫んだ。だが、目の前の変化に理解が追いつかない。

青い若草が黄金色の海を作っていた。

風に靡き漣を作る様は海と表現してもおかしくない。

それよりも、これだけ時間が経過しているなら、タクミは今どこにいるのかと周囲を見渡す。

「やっと出て来たのですか。遅いですよ」

白の社の屋根の上で寝転がっていたらしく、上から声がかかった。

それで?と結果を催促され、中で起きた事を話す。

話が終わると、そうかと一言だけ呟いた。

そしてさっさと先に行こうとする。

慌ててその背中を追いかけた。



白には白というだけでは龍神にタクミと付けたということで何か我にもつけろと言われた。

急すぎると思うも、真名は伏せるもので、いわば愛称を付けてくれということ。

ふかふかする条件だと言われたので、慌てた。

「あの白が愛称を付けろというのは…」

目の前には小さな虎。

『タクミよ、その名で呼ぶな』

「はいはい。「マサト」でしょう?」

うむ、と納得したように頷く白、改めマサト。これは鳥と同じようにしているらしい。

らしいというのは、鳥は自らを似せた人形に意識を乗せていたりするのだが、マサトは違う。

分体とでもいうのか、マサト本体と同じであり、違うものという。あやふやなのは本人の説明がうまくないせいだ。

『教えを乞うた訳ではなく、自然とできるものだから』

だそうだ。

周りを見ると、黄金色になった草原を見るに秋になったのだろうか。

そよぐ風もどこか、夏の若葉の青臭さを潜め、秋の深さを含んでいた。

「なんか、あっという間に時間が過ぎるな…」


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