表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/77

緑島2

流れ星を観ていたら、いつの間にか寝ていたらしい。

朝陽が西日とはまた違って眩しい。

グロン達が渡してくれた握り飯を食べ、周りを見る。

そよぐ風と靡く草。

しかし驚くことがあった。

「草、伸びている?!」

寝るまでは五センチくらいの長さしかなかった筈だが、立ち上がってみると膝下まで伸びていた。

遠くに行く程長くなっているようで、今いる位置が膝下と考えるとどれだけ長くなっているのかと思う。タクミはいつの間にか草まみれになっており、払わないと起き上がることすらできなくなっていた。

「この我まで影響を及ぼすとは、制御できていないのか?」

草まみれから脱し、無理してなんとか人型になったタクミが疑問を呟く。

ちなみに、タクミと朱は制御できていたため、出来ていないことが考えられないとのこと。

「白は我よりも長く生きておる。我らよりも早く制御できなくなると言うことは有り得ぬ筈だが…」

この場所に留まっていたとしても事は進展しないため、神殿へと急いで向かう。

昨日よりも早く。

途中から、草の丈が身長を越えたため、速度が落ちる。

そこにふと芯のある草を見つけ、引き抜く。

青い鎧を纏っているためすぐに棍に変わる。

棍棒で丈の長い草を掻き分け進む事にし、進むこと数時間。

かなり近くにはっきり見える場所までたどり着いた。遠くからでは判りづらかったが、神殿というよりも、こちら側に来る直前にいた神社の社に似ていた。しかし、所々苔や染、埃等が見られた。

それらはまだ掃除すればまだ取り除けるからいいものの、他に問題があった。

社自体に罅や黴、かなり深い亀裂によって傾いていた。

「信仰自体はあっても、社自体が持たないのか…」

「修繕しようにも、西のグロンの彼らでは流石にこの距離は簡単に進めまい。直すための荷を持つならば、それこそ数十年単位での作業になるだろう…」

二日で踏破した俺はタクミと青い鎧の性能のお陰なので、普通では無理な手段なのだろう。

そして、社の階段の前で立ち止まる。

木造らしいが、雨風晒され、五世紀ほど経っているらしいのだ。そら防腐処理されていない木材は腐敗してくるわ。

木目に沿って穴が無数に開いており、虫が巣食った痕すらある。

鳥とタクミの所の神殿は石や岩等を主に使っているし、人の手が入りやすい位置にある。神殿自体がダメになるなんてそんな心配はしなくてもいいものなのだ。

話が逸れた。

少しずつ体重をかけても平気そうな場所を選びつつだんを上る。

タクミは

「我は社の中に入るのは…遠慮させてもらう」

何故か顔を逸らして明後日の方向を向いていた。

そんな訳で、一人で進む。

慎重に進んでいると時間の流れが変わった様に感じた。

それがはっきり分かったのが、壇を上りきり、施錠されている扉を開けた時だ。

気が付けば後ろに見えるはずのタクミと草原は消えており、代わりに見えたのは「神域」と呼ばれる空間の証拠である生成り色と周囲を浮遊する光だ。

何時の間に入ったのか解らなかった前回、前々回と違い、意識して入ったため、時間が捻じれていることも感じ取れた。


『誰ぞ。我を西の神と知って此処を侵したのか?例え知らずともこの場に入った時点で帰すことは無理な話だがな』


奥にぼんやりしか見えなかった姿がはっきり見えてくると同時に声をかけられた。

西の柱。白。

虎の様だが、虎の模様は無い。その身に纏う覇気はいいものの、様相が全てを台無しにしている。

本来ならばふわふわになってあろう毛並みはあからさまに手入れがされておらず、ボロボロになっている。見ていてみすぼらしくなってきて、憐れとしか感じない。しかし、


「虎なのかどうなのかはっきりしろよ!」


そう叫んでしまった。

神様に向かって。今更だけど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ