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緑島

とりあえず、下の「ゲ」達から相手をする事になった。

「ゲン」は見学し、学ぼうということで、こうなった。

まずは纏をしないまま無手同士という。

「ゲのズグです。お手柔らかにお願いします…」

挨拶の時は少しビビり気味だったが、模擬戦用の場所に入った時に目つきが変わった。

ちょっと、難しいか?と始まった模擬戦だが、「ゲ」の人達はアキラと同じくらいの技量で、そこそこ相手にできた。

というよりも、アキラが「ゲ」に上がる資格を得るために外に出ていると言っていたので、氏族の元に戻ったので上がっている可能性もある。だから、アキラと同じ位だろうと考えていいだろう。


問題なのがその後の「ゲ」の中でも「纏」をした状態での手合せだ。

タクミによって今は青しかなれず、制御が甘い。それは認める。

その手加減ができないまま万が一ということもありうるとドンシさんや、各階級の一番上の者に話すと、そろって

「センシと手合せし、そこで致命傷を負ったりましてや死亡すると言ったへまはしないはず。興奮し暴走する可能性は否定しないものの、自己防衛できてこその「ゲ」以上の者への条件ですから」

簡単に言うと、手加減しないでくれ。そいつが死んだとしたらそいつ自身に「ゲ」以上であることを名乗る資格は無い、と。

「容赦ない」

「では、纏をしなさい。次が待っています」

後ろには階級順とはいえ、整列し今か今かと待つグロン達がいる。

タクミとしては、早く神殿に行き、「白」と呼ばれている西の神に俺を合わせたいのだろう。

しかし、それは五日ほど後になってから叶う。

五日間ずっと、朝から日没まで手合せし続けたのだ。

おかげで、青の纏が馴染み始めた。「ゲ」との時は制御が甘すぎてこちらが暴走しかけた。「ツ」とは、そこそこマシに動けるようになり、青の力に振り回されるだけでなく、抑えるコツがわかった。「ジ」との手合せは逆にこちらが殺されかけた。握っていた棍を逆に取られてしまい、俺よりもうまく扱われてしまった。そのおかげかそれ以降で危うくはなりながらも手合せをできた。

ドンシさん自身が手合せを願い出て、慌てた。俺はもちろん、予想していなかったタクミや、反省点の洗い出ししていた他のグロン達は混乱以上になっていた。

流石に「ジ」で「ザ」であるドンシさんに挑む勇気も気力もなく、それに重要なここの氏族の柱をへし折る訳にもいかなかったため、丁重にお断りした。

その日の夕餉にドンシさんと補佐であるツ・ギムグ・ザゲさんによる剣舞が行われた。

ギムグさんの部下に聞いたのだが、「ザ」や「ザゲ」にまでなると、そこまで極めてしまうらしい。

それでか、二人による剣舞はとてもきれいに見えた。

静と動。それがはっきりし、素人でも見惚みとれるだろう。

そして、五日間が過ぎた。


手合せを始めて六日目。

いい加減タクミが飽きている様だし、俺も「お使い」を再開しなければならないだろうと思い、ドンシさんに朝一番にその事を話す。

「そうですか。行きますか…」

同情よりも、我等風の氏族全員で無事を祈りますと言って、送り出してくれた。

船を貸してくれると言う話もあったが、タクミが

「これは船で行くよりも、レン自身の足で進むことに意味があります」

と断った。

確かに、神域に行くと言うのに乗り付けるのはどうかと思った。

南や東はどう説明するか?ズバリそんな余裕なかった!


ということで、潮の引いてできた一本の道を、青の纏の脚力により走る。

集落を出てまだ少ししか経っていないはずなのに、もう潮が満ち始めている。

「ほんと、こちら側ってどうなってんだ」

科学化学は弱く、自然現象とかは強く、そしてあちら側に無い「呪術」がある。

タクミは龍の姿で上空を進み、俺に速く走りなさいと急かす。



そして、息が上がり砂浜で転がってしまった。流石に陸地全てに緑が茂っているわけではないため、砂や土の場所がある。今はその一か所だ。

俺を撫でるように風が吹く。

その風に若葉の青臭さが混じり、あちら側にいたときに寝そべった事を思い出した。寝そべった場所は小学校で、中庭に芝生があった。中庭に面して職員室があったが百葉箱などで死角になる場所を選んでいた。しかし何故かばれてしまい、掃除時間が俺達の班だけ延長されていた。

「あの時は楽しかったんだがな…」

小学校だけ楽しかった思い出しかない。中学はテストと勉強漬けで遊んだ記憶が無い。高校はそこそこだったが、小学校ほど自由は無く、つまらないとどこかで感じていたのだろうか。


「何をしておる」

思い出に耽ていると、タクミが覗きこんだ。

龍神のままなので至近距離で見ると恐ろしい。

どうやら神域では人型の姿は取れ無さそうに見える。

さくさくと若草を踏み、進む。

進むと言っても今は昼で、西に神殿があるため、日を左にする。

遠くの方に何か小さく見えるものの、神殿自体の大きさがタクミの所と同じであればかなり遠い。

日没までに辿り着けるかどうか怪しくなってきた。



それから、いくら進んでも進んでいる気がしない。

日は傾き、東はもう暗い。今は神殿が陰になり、逆光でかなり眩しい。

なんていう現象だっけ。もう距離感覚がくるってる。

「仕方ないな…」

もう星が奇麗に見える時間まで歩いた。しかし、進んでいるように見えない。

諦めて寝転がる。腹は減っているものの、食べる気力すらわかない。

「何か食っておけ。白は玄程ではないが扱いが難しいのだ。閉じ込められたらたまったものではないぞ」

そういう龍神は草の上に寝転がる。鞄の中に西のグロン達に頂いた食料があるのを思い出し、それを出して食べる。

程よく塩の利いた握り飯の様なもの。疲れていたおかげか、美味しく感じられた。他の食べ物のも美味しいと言えるが、これの方が更に上のように思えた。

握り飯はグロン達が主食としているらしく、一般では扱われていないらしい。王都では粉もの料理が主だとか言っていた気がする。

闇の空を流れ星が流れていく。

あちらでは大気層で燃える宇宙の塵だとか何とか聞いたが、こちらでは何でこの幻想的な現象を起こしているのか。

※書き溜めが終わったので日・木更新に変更します。

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