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翌朝。朝食をとっていると昨夜と同じく、賭け事が食堂の中で行われていた。但し、内容が「完食できるか」ではなく「どれだけ注文し、食べるか」になっていた。

賭けるものも多少変わっており、朝食に食べるものや量などを賭けていた。

そんな騒動を他所に普段から食べている量を食べ、後にした。


宿をチェックアウトし、町の外に向かおうとすると、何やら工場街のような煙突の並ぶ方から明らかに普通じゃない黒煙が昇っていた。

「火事になったのか?」

野次馬になるつもりもなく、人混みを回避しようと煙に背を向けた。

が。

背負った槍に引き摺られる様に、人混みの中へと進んでしまった。



現場にあたる出火した場所に進むにつれ、身動きがし難くなる。

「なんなんだ!」

ついに火元にいちばん近いところまで来てしまった。

周りは消火のために水を運んでいたり、野次馬が近づきすぎないように規制している人達が慌ただしく動いていた。

炎の動きがなにかしら意志を持った生き物のように唸りを上げる。

あちこちでガラスが割れ、有機物は炭化し、金属は溶け出して轟音が響き人の声が全く聞こえないくらいになっていた。


ふと背にかかる重さが無いことに気が付いた。掏られたかと慌てて周りを見渡すも人しかない。

あれは槍で長さがあるので見失うなんてことは無いはずなのにと、もうもうと巻き上がる黒煙を目で追って吃驚した。空中に槍が浮いていたのだ。

確かに焔の鳥から授かったものだし、変形もした。とはいえしかしこれはどういうことだ。

そうこうしているうちに重力にひかれて、とは到底ありえないが燃え盛る火元へと吸い込まれていった。

俺は慌てて追いかける。静止の声がかかるも流す。



水でもかぶればよかったか。

炎の中を進むにつれそう思った。慰めにしかならないとはいえばそうだが。

炭と化した木材などをいくつも踏み超えたあたりで違和感を感じた。

「火力が弱くなっている?」

消火はまだ表面くらいしかできていないはずで、奥の方であるここが弱くなっているはずがない。

そう思い進むと眩しく目がくらむ程の光があった。

光源はやはりと言ったところだ。

だが、不思議なことに炎を吸収していた。その影響が周囲と光へと出ていたのだ。

吸収されていく炎に触れないように槍に近づき、両手で握る。

途端、残っていた炎が一瞬にして霧散した。したかに見えたが、すべて吸収されたようで、槍自身の重量が増していた。

炎がすべて消えたことにより、焼け跡と化した元建物の周りからは野次馬たちの声がざわめきあっていた。

俺は、目立つなと警告していったライデンさんの言葉を思い出し、だだ広い焼け跡に入ってきた捜索隊に見つかる前にその場を後にした。



町の境目へとつくと丁度、外へ向かう人たちがグロンと話し合っていた。というよりもすぐ喧嘩になろうとしかけていた。

その一行の一連を少し離れていたところから見ているとグロンと目が合ってしまった。

すこし同行者に断ったらしく、ずんずんとこちらへ向かってきた。

慌てるもそもそも歩幅が違いすぎるためすぐ追いつかれ回り込まれてしまった。

「えーっと、俺あなたになにかしましたっけ?」

「…おぬし、まさか「センシ」であるか?」

また「センシ」か。

「船の上ではそういわれていたかな…」

「!!」


そう。シャチサメ撃退後はなぜかグロン達からの視線が羨望や憧れ、嫉妬などをわかりやすいほど込められたものを感じていた。


「先程からこちらを見ていたはずだが、なにか用があるのか?」

通りすがっただけで特にはない、なんて言っていいものか。

だが本当に一人で外に向かっていたのも事実だと伝えると、グロンはさっと同行者たちの元へ戻った。

幾つか話し合っているらしく、そのまま過ぎようとしたところで先程のグロンに、

「マッテクレ!セメテモウスコシダケデモ!」

と慌てたらしく強引に引き戻された。

また、同行者の人たちに文句を言われているらしく両手を振って否定している様子がどこか既視感があった。


それからすこしして、また近くに来た。

「すまないが、センシ殿は「外」へと向かわれるとみて間違いはないだろうか」

「間違っちゃいないけど」

どうして、と続けそうになり一つのことを思いついた。

「もしかして、一緒に同行してほしいのか?」

そう訊いてしまった。

瞬く間に表情が明るくなるグロンだが、俺なんかが同行してもいいのだろうか。

「構わない」

先を越されてしまった。


というわけで、一行に混じって行くことになった。

どうなるんでしょうね、俺の旅。


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