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新たな夢

本土へと渡り、早半月。僕、テツヤは東の諸島から出てここ、東の港町から少し南に位置する町に滞在している。

記憶を戻す為、少しずつ歩いてここまで来たが、少し前に持ってきた金銭が底を尽き、生き倒れかけた。その時に助けていただいた店で食事代とか諸々の為に臨時で働いている。

この店は飲食店で、簡単な注文を受け、それを調理場へと伝える。そんな感じ。

いまだに覚えられない名前とかあるけれど、従業員の皆さんやお客さんはとても優しい。

一時的なものなのだが、そうするといいとか色々アドバイスをもらう。

そうして半年間を過ごした。


半年である程度貯蓄できたが、これからどうしようかと迷う。

最近は厨房の方まで手伝うことが増え、少しずつ技術は身に付き始めている。

それでも、記憶は未だ戻っていない。

レンさんは東にいた時から行動するもしないもその人が考えなければならないと、自分の意思の決定は他人に委ねてはいけないのだと言う。


お世話になっている店長にそういう事情を全て話す。

記憶を戻す旅に行きたい事も、この店を気に入った事も、自分の腕がどこまで通用するか考えていることも。



全て包み隠さず話す。

今は店内だが閉店時間で、客は誰も居ない。店長とタクヤだけ。

話してから沈黙が長く感じるほどの間があく。

店長が溜めていた空気を吐く。

働いているときよりも緊張しているのが、強く握って少し赤くなっていた拳でよくわかる。

そして、

「ワシはな、そろそろ誰かに跡目を継がせようかと考えていたところなんだ」

そう切り出した話にタクヤは驚いていた。

「アンタにならこの店を継がせてやってもいいと考えていたんだ。他の奴等は掛け持ちしていたり、他の街に実家があるだとかで、正式にとは言いづらくてな」

建物自体の買い付けからしようとしたらかなりの時間と資金が必要になる。ならばこの店長の申し出は、「この店を継ぐ」という選択肢が増えたということだろう。

「いいのですか?」

本当にいいのかどうか、嬉しさと不安と他の感情が混じり、混乱していた。


店長は嬉しそうにうなずいた。


その翌日から、業務内容が今までとは比べ物にならない程濃くなったことは言わずとも解るだろう。

傍から見れば大変だろうと思われるだろうが、タクヤにとってそんなことは無かった。


※次から本編へ戻ります

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