その後の三人
※本編とは違う視点です
「うーん」
さっきから何悩んでるかというと、約三ヶ月ほど前にとある約束をしたからである。
机に向き筆を持つまではいい。問題はその先だ。
「タイガ、一体何分そうしているの」
いや、ね。それは。
「言い訳しないの」
机から引きはがされ、半ば強制的に部屋から放り出される。
「煮詰まったなら、買い物に行ってきてよ。気晴らしにもなるでしょ」
そっちが主な理由じゃ。なんて言葉は扉を閉められた先に通ることは無かった。
はぁとため息をつき、渡されたメモと共に歩き出す。
*
よぅと背後から声を掛けられ、振り向くと、ケイがいた。
また、家族から追い出されたのかと痛いところを突く。事実だから否定はできない。
「締め出されてから、何この部屋!どうして一日でこんなふうになるの!いいかげんにしてよ、もう!なんて叫び声が聞こえた気がするが…」
「おい、また散らかしたのか。やめてくれよ、手伝わされるのこっちなんだぞ」
「知った事か」
「いい加減にしろよ」
「それよりも」
「おい」
煮詰まっていたことを理解しているならと、話す。
溜息が返されたが、
「要は、あの日を思い出しても、文章構成することができない、と。」
頭抱えたい。
レンさんがやってのけた数々。それら一つひとつが常識はずれで、まともに書き起こすと、馬鹿にされる。場合によっては製本すらされないだろう。
「なら、半分フィクションで、と思ったが、それだと筆が進まないんだ」
悩む。
同じ目的地へ向かう旅をし、その道中であった非常識で不思議な時間。
「あったこと順番に書き記せばいいんじゃない?」
やっぱり、そうなるか。
「うだうだ言ったって何も変わらないし、そうしたら?」
そうするか。
空を仰ぐと、あの数日と変わらず雲が流れていた。
**
タイガがケイに相談していた同じ時間、ミオはというと。
「ここは、こう?」
少し力を込める。
ボンと音を立てて爆発したのは小鍋。しかしただの市販品ではない。
「耐久強化したのに、何でー…」
部屋中に散らばった元小鍋の破片を集める。
あの日、レンが村ひとつ分の霊の「浄化」をした後、歩きながらレンとアキラに問いただしており、その再現ができないかと奮戦していた。
やっぱり聖属性付与された浄化用の水に何か他に含んでいたのかな。でもアキラさんは急いでいた為にただの川の水を汲んできたとか。うーん。レンさんの方に秘密があったのかな。そういえばアキラさんは古代呪術だって言っていたっけ?現代呪術ではできいないのかなぁ。
「ミオ、だだ漏れ」
「ひゃあ!」
後ろにはいつの間にかケイがいた。
床に食い込んだ破片を拾っていたため屈んだ姿勢でいた為、気が付くのが遅れた。
「相変わらず、こっちも散らかってるね。」
「こっち「も」?」
そう。といって、先程までタイガの部屋にいたらしい。
「こっちはまだましだけど……何を試していたのさ」
「え?レンさんがやってのけた大規模な「浄化」を現代呪術に変換できないかって思って」
古代呪術は膨大な量の「触媒」と「対価」が必要で、「対価」の量を減らしたものが現代呪術。
「ごく微量になったものや、陣自体を介して使用している者から直接消費していたりするものが一般的だけど……「対価」を直に呪術変換していたの?」
「何言ってんの?」
ぶつぶつつぶやくミオにケイが拾い集めた鍋片を渡す。
ありがとうという余裕はあるらしく、破片を受け取った。
*
ミオとも別れ、一人街中を散策する。
二人ともレンさんの事ばかり考えてる。
あの怒涛ともいえる、南から東への移動の間の濃い日々。
「あーあ。また旅に出ようかな…」
天高く飛ぶ鳥が鳴く。
「人の事いえないな。まったく」
次に旅に出るときにまた会えたらいいなと思いつつ、目的地はどうしようかと、それにあの二人も誘ってやるかと考える。




