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西へ2

槍と大剣の打ち合う火花が散る。

俺はウサギやホーリー、タクミに毎晩のように扱かれているが、アーリーもかなりの実力の持ち主であった。

「俺と打ち合えるとは、なかなかやるじゃねぇか」

「そりゃ、どーも」


いくらか打ち合っていると周囲の陰に紛れていたエネミーが寄ってきた。

そこからはエネミーを相手しつつ、アーリーとも戦わなければならなくなった。

時間はそれほどかからなかったが、病み上がりにはきつかった。

エネミーが際限なく湧くのでそちらに温存していた体力を奪われたのだ。それはアーリーも同じで、ただでさえ重量のある大剣を振るうのだ。槍よりも重心の関係で取り回しが難しいのに、そこに終わりが見えない敵との戦闘。肉体よりも先に精神の疲労がキャパを越え、挫けた。


「なんであんたそんな涼しい顔してられるんだ。あんな大群とでも戦ったことあんのか?」

自分とアーリー、タクミと馬。それ以外の周りをエネミーの死骸に囲まれた場所で休憩をしていた時に聞かれた。

「そんなことない。大群と闘ったこと自体今回が初めてだ」

「はー、すげぇのな」


馬が十分に休ませることができたのを確認すると、

「それじゃ俺はあんたが臆病で弱虫じゃなかったことを伝えてくるぜ」

とアーリーは王都のある方面へと、今度は馬に合わせた速度で帰って行った。


「嵐去ってまた一難だったな。これで済めばいいんだが」

「あちらでは「二度あることは三度ある」というのがあるそうですね」

「妙なフラグ立てるなぁー!」

まぁぼちぼち歩き始め、西へ向かう。


「なんとかなるでしょ」



はい。フラグ回収。

イユイが絡んできました。

『ねえ、「彼」のとこはいかなくていいの?』

「彼」?

「いずれたどり着きます。三番目はよほど消されたいのですか?」

『三番目じゃなくて、イユイだって何遍言えば覚えるの?それとも何。魔神の事は覚えないってか。あーやだやだ。これだから若い奴は』

え。タクミが若いって。

『「あ、喰いついた。」』

「こういうときだけ息ぴったりなの止めて。まじで」

『知らなーい』

「知らんな」

視線逸らす二人。アーリーが去った後、何故か空中を漂っていたイユイに捕まった。



『これからここさ、大雨降るの知ってる?』

「え、何で」

「我の機嫌が悪いからに決まっておろう」

そういえば水属性の神様だったな。タクミは何故かイユイに捕まってから機嫌が悪い。

『忘れてたんだ』

「いや、忘れては…」

ジッとガン見された。

「すみません。忘れてました」

「正直でよろしい」

『あーえっらそうなのー。三百五歳児の癖に偉そうにするんだー。わーるいんだ悪いんだー』

「三…イユイこそ、我には名があるのだぞ」

『貴方達が千三十年以上も「三番目」としか呼ばなかった仕返しです』

二人共真顔でそんな言い合いをする。子供の喧嘩か。

それにしても三百五歳のタクミと千三十以上のイユイ。一番若い俺は元の世界で数十年しか生きていない。なんで年を取りすぎると逆に思考が退行してしまうのか?

「すっごくどうでもいい」

「『何か言った?』」

「いえ、何も!」

まずい。思わず考えが口に出てしまっていた。


今、狭い古い樹のうろで雨宿りしている。三人で、だ。

一人でやっとこさの広さだと言うのに、そこに三人。狭い。とにかく狭い。

出たいが、外は豪雨よりもスコールと言った方が正しい位の雨。

風があまり出ていないのがせめてもの救い。

「止まない雨は無いが、止ます気の無い雨はあるんだな…」

まだ一時間も経っていないのに、もう何日もいるような感覚になってくる。

黒く、濁った雨雲。あの魔神を思い出す。

『下っ端はこのタクミ?の機嫌の悪い時に強制的に柱にされたからね。似ているのもわかるよ』

人の心を読むな。

『いやーこの雨見ていると思い出すなー…って、思わない?異端児君』

「俺、レンです」

違った。

くるっと振り向いた顔に人の心読むなんてことしてるとは思えない。


雨やむまでしりとりを、と思うも、こちら側とあちら側とで言葉が違うようで、出来なかった。


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