西へ
地下水路から地上に戻ってから三日後。
龍神が一日で完治し、俺もその半日後に治った。
ソウジ達にこの回復力は驚き、この王都にいるとなにかしら実験台に使われそうだと感じた為、離れることにした。元々、まだ北と西と行かなければならないこともあり、治ったら発つことを二人には話しておいた。
それが今日。
前日まで、ソウジと共に居た所を視られたのか知らないが、騎士にならないか、いや王様の護衛に、等絡まれた。
一番厄介で断るのに時間がかかったのは、旅の護衛やエネミー討伐をこなす冒険者と呼ばれるものだった。グロン達とやっていることは同じなのだが、活動の主にしている場所が違うため別物と分類されてる様だ。そいつらは、ソウジによる
「誰に何を言っているのか判っているのか?私の友人だぞ?」
脅しにより激減したものの、いまだしつこく諦めの悪い奴がいる。捕縛されるまでしつこかった。
これ以上そんな莫迦を出し無駄に牢屋を使わせることは無いだろうと、早朝に発つ。
「これからもお元気で」
「そちらも達者で」
「元気でね。レンさん、タクミさん」
「精進するのだぞ、アラタ」
朝靄が薄くなる前に門をくぐる。
「…てか、何時の間にアラタと仲良くなったの」
「我が復帰した後だが。そうか、お主はまだくたばっておったな」
「笑うなああぁぁ!」
タクミ。
龍神の正体を隠したまま呼ぶために付けた。ただその為だけのもので特に深い意味は無い。…筈。
*
「おいおいおい、もう行っちまうのかよ!」
日が昇り、高い位置から傾こうと言うときに叫ばれた。
時間から考えれば王都から追いかけて来たとは考えにくいが、その声の主は馬に乗っている。その馬はヘロヘロな様子を見るに休まず扱き使われたことだろう。
声の主に睨みつける龍神。いや、タクミ。般若の顔よりかいくらかましだが、美人がそんな顔するんじゃありません。
心の中で一人突っ込みし、宥めようかと考えていると、
「彼奴は運んでもらっておると言うことを理解しておらぬようだが…振り落さぬのか?」
馬に視線を合わせ、話しかけていた。
「振り落す力もないと…そうか」
なら、とそこからがあっという間だった。
*
馬の正面から横に移動し、男を引き摺り落とす。「降ろす」ではなく「落とす」と表現した方が正しく思えてくる扱いだ。
そして地べたに這いつくように踏みつけ、立てなくする。
男はそこそこ鍛えている様だが、神様相手に敵わないだろう。
上から踏まれ、睨まれると、竦んで動けなくなったらしく、がたがた震えていた。
「それで、運んでくれると言ってくれた馬を乱雑に扱ってまで何の用です?」
返答次第ではここでエネミーの一部になるぞと言っていたぞ。タクミ…ウサギが血気盛んだと言っていたがだいじょばないんじゃないか…?これ。
完全に怯えきってしまい、話せるようになるまで時間がかかった。
簡単にまとめると、俺が冒険者にならないのは神の「お使い」という理由が有りなれないのだが、弱い、臆病だからだと悶着あったそうだ。実際俺は槍が無く、鳥たちと会っていなければ弱かったのだから仕方ない。
そこで、本当に弱いからなのか、どうかを確かめる特例が出たそうだが、俺が王都の外へ向かったため、急いで追いかけた、と。
なんなの。この茶番。
彼は、アーリー。冒険者としてはかなり腕が立つ。らしい。なにが基準かどうか知らんが。
その特例依頼を受けたからにはと、勝負を挑まれた。しかも一騎打ち。
審判とかはどうするかと聞いたが、
「膝を着き、音を先に上げた方が負けでどうだ」
まぁいいかということで。
俺は槍を持ち、アーリーは大剣を構える。
今回は「纏」は無しで行くつもりだ。




