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都市10

沈黙。とにかく沈黙しかない。それ以外は水の流れる音のみだ。

何時間、何日過ぎたかもう数えていないが、とりあえず龍神の無事は確認できたため、地上へ戻ることに決めた。

龍神は人型になると怪我の酷さが目に見えて判ってしまうため出口までは小さくなった本来の姿でいることにしてもらった。

縦坑では、元来た道は下にあるため、落下している間に反対側へたどり着く。

目印は特にしていなかったが、外側からは見た直ぐ理解した。

そこだけが違うので迷わず飛び込む。

天上にいた蝙蝠擬きたちが驚いてどこかへ飛んで行く。

視界の隅に入ったものの、前を見て戻る。ここからはほぼ一本道なので迷うことは無い。蝙蝠擬きをやり過ごした交差路で迷わなければいいのだから。



ずっと歩き続け、交差路も無事に超え、入ってきた穴があった場所へ戻って来た。

「……あれ? ない」

そう。いつの間にか封鎖され、隙間から入るわずかな光だけがあった。

「塞がれたようだな。まぁ、仕方無いか。道を開けてから大分経っていたようだ。」

いつの間にか人型になっていた龍神が言う。

「その拳は…」

右手を固く握りしめ、脇を閉じ腕を引いていた。その姿を確認した直後、その腕が消えたように見え、塞がれた壁から瓦礫と化した壁材が降ってきた。

大雑把に砕いてあるとはいえ当たると痛い。

「壊すなら壊すって言って!」

「これくらい避けてみせなさい」

きっぱり言われた。



そして砂埃も収まり、地上に戻ることができたが。

ソウジとアラタに何日どこで過ごしていたのか判っているのかと怒鳴られた。

医療技師に再び右腕を診せる羽目になりそちらも怒鳴られた。

右手に医療技師、左手にはソウジとアラタと、同時に説教をされ耳が痛い。

結果、右腕はギプスが可愛く思えるほどの硬い素材でできた固定具をめられ、それが完治するまではソウジの新居になる家に軟禁させられることになった。

龍神もある程度治ってきてはいたが人間では重傷の部類には変わりないため、天蓋付のベッドで包帯ぐるぐる巻きになっていた。

「こんなことをせずとも、もう治っているのだが」

技師が帰った後、勝手に包帯をほどくとそこには拉致される前に見た時と何一つ変わらない顔の龍神がいた。

「流石神様ってとこか」

「何か申したか」

じと目で見るの、やめてください。

瞬く間に治った龍神と違い、俺は完治に時間がかかる。

しかも、何日も地下水路に潜っていたものだから碌に休めていない。それらが後押しし、まもなく寝てしまっていた。



次に目が覚めると、天井が見えた。昨日見て知っているから知らない天井とは言わないな。

「はぁー……」

溜息しか出ない。

まさかソウジが、準金持ちになっていたとは。兵を命令ひとつで動かせるのは聞いて知ってはいたが、物語によくある貴族様だとは。

その事はアラタに再開した時に話そうと思っていたらしく、一緒にいた俺と龍神も聞くことになった。

二人はゆっくりと会えなかった間の分の話をして、お互いの絆を確認していた。


……その光景を傍から見て、羨ましい、と少し思った。


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