都市9
水面に無様に顔面から落ちた。
青い姿になって。
体制を整えようとするも、足が床に付かない。
水面にいるも、その深さは解らないほど。
飛び降りる直前まで持っていた棒切れはいつの間にか無くなっていた。
「しっかし、何時からだ?何で青色になったんだ?」
首を傾げるもわからない。
だが、本当にあったのだ。三色目が。
炎の魔神が言った通りならば、これで龍神を探すことができる。
だが、音、気配、影で見てもわからない。
「どうしようか」
今いる水面から抜け出られそうな横穴が無い。
壁を登ろうと思うも、手が濡れているのと、壁自体に凹凸がないから早々に諦めた。
そんな状況の中、背中に何かが当たり、振り向くと、小さな板らしきものがあった。
おそるおそる触れるとぷかぷかと浮いているだけで何の変哲もない。
しかし、手を乗せ体重をかけようとすると沈んでしまう。
よく壊れないな。なんて思いつつふと考えが浮かぶ。
この板を踏み台にしてさっき飛び降りたあたりまで飛べないか。
なんとなく浮かんだだけで本当に届く確証もない。
水以外何もない空間でただ行動できずに立ち止まり続けるよりはましか、と実行に移すことにした。
両の手は板の端を支え、片足は水に付いたままになってしまうがもう片方の足で板を思い切りける。
一瞬で景色は変わり、飛び降りをした場所が下の方に見えた。
そういえば、シャチサメの時すごく高く飛んでたっけ。
今更思い出していた。
壁面に、傷跡が多く見られる様になってきた。
「あの横穴から上の方へと飛んで行っていたのか」
勢いが衰え始めた時になって、
「そういえばどうやって横移動して道に入ればいいんだ」
と、考えが遅かった。
失速し、重力に引かれ始める。
慌てて壁際に見つけた出っ張りに手を伸ばし掴む。
一瞬宙ぶらりんになったが、壁に足を付けて支える。
ふう、と一息つき、上下を見渡し、休めそうな場所を探す。
キイキイと上の方から蝙蝠擬きの鳴き声らしき音が聞こえてきたためそちらに意識を向けなくてはならなくなった。
何匹かは見えない位置へ行ったり来たりしているのが見え、そこに横穴があることが確かになった。
そこまでは脚に力を込め、縦方向に走る。
纏の足の裏にグリップ力はあまりないらしく少しずつずり落ちていく。だが、完全に推進力が無くなる前に、見えていた横穴へと飛び込むことができた。
蝙蝠擬きに騒がれ攻撃されたが、鎧により阻まれ一切傷付いていないと分かると、散り散りに逃げていく。
奥が暗く判らなかったが、敵がいるとはなんとなく思えなかったので進む。
次第に壁面の傷跡が先程の比ではない程の酷さになってきたあたりで、周りの雰囲気が変わった。
「……もしかして、龍神?そこにいるのか?」
思い切って声をかけるも、返答無し。
仕方ないので止まる。
「龍神、もしかしたら聞こえてないのか?それとも返事できない状態なのか?」
『……………』
こつんと頭に小石が当たる。
投げたのか?まさか、本当に返事ができないのか。
焦って急ぎ奥へと走る。
*
横穴の最奥。
そこにいたのは、本来の姿をしていたものの、全身大小という大きさの傷を負い、重傷の龍神だった。壁面には傷しか見えず、本来の道幅より広くなっていた。それはそれだけ壁を削ったと言うこと。
その姿に呆然となってしまった。
どうしてそんな傷を負ったのか経緯を聞くと、
『あの「初めの魔神」が追ってきたのだ。その前はここの住民の良からぬ事を企む輩に捕まっておった。そちらは手加減ができず全て微塵にしてしまったが』
「微塵…」
挽肉か。腹減ってたな。あとで何か食えると良いが。それよりもここを出ることが先か。
『その後、貴様の気配を辿り合流しようと思ったのだが、如何せん、まだ微弱にしか感じることができなかったからな。解らなくなったのだ。それが、先程までの話だ』
急に気配を感じることができた直後、「初めの魔神」が現れ、襲いかかったのだと。
『力が今までの通り全力が出せておればこんな事にはならなかったのだがな』
今纏っている鎧に力を持って行かれたため、全力を出せないのだ。
「……………」
『なに。そんな顔をするでない。元々こういうものなのだ。割り切れ』
※次の分早いですが出しておきます。




