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都市7

治療技師に右腕を固定し、手と指先はギプスのように包帯を雁字搦めに巻かれた。

そして、その包帯の上に陣を書いた。

「この陣は怪我が治り、時間が経ってから消えるものだ。消そうとしても消えないようになっているから、無理矢理消さないこと。したら余計な傷を増やすことになるぞ」

これで終わったようで、他の患者がいないか確認しに行った。

「治ったら消える陣」か。原理とかどうなって…考えても無駄か。

腕は肩からなら動かせるが、肘と手首、指先は一切動かせなくなった。

今エネミーや魔神と遭遇したらあっという間に殺されそうだ。

纏も槍も満足に扱えそうにないから。

溜息しか出ない。

「応急処置だから、無茶だけはするなよ!」

少し離れた場所に行った治療技師に言われた。

無茶はしないと返事をし、立ち上がる。

火の魔神に深手を負ったのは右腕のみでそれ以外はほぼ無傷。

鱗の破片は外まで続いていたこともあり、それを追いかける。



鱗片を追いかけて結構経つ。

東の空にあった太陽が真上を過ぎた位だ。

昨日の晩飯以降何も食べていないため空腹になっている。減りすぎて胃が痛いが、そんな弱音を言っている余裕はない。

龍神はそれよりももっと長く、拘束されているか連行されているのだ。

気分が落ち込んでいく中、視界の隅に「王都内部」に本来なら入れない存在の影を見た。

急いで顔を上げ、見えた方向へと走る。

「何故、こんな所にエネミーがいるんだ」

追いかけると、また物陰に隠れるように先へと逃げるエネミー。

「罠か?それとも…」

この先にいると思われる龍神の元へと案内しようとでも?

エネミーが誘っている。それ以外に手掛かりがないため、追いかける。

裏路地、塀の境目、用水沿い。ついには柵に抜け穴のようにぽっかりと穴のある用水を乗り越え、中に潜りこんでいく。

「この中にいるのか?」

少し躊躇ったが、状況が改善する兆しが無く、どうしようもない為進む。



中は薄暗く、湿って、そして。

水路内部全体に何かに擦れたような傷がずっと続いていた。

「まさか、これ…あの姿に戻っているのか?」

人型の時に鱗は見えなかったので、恐らく何らかの事態で本来の姿に戻ってしまったのだろう。

周囲の確認をしていると、暗い奥の方から飛んでくるものがあった。

咄嗟に腕で庇おうとしたが、右腕は満足に動かせない。

ならばと、槍を盾として防ぐ。

槍に弾かれた物体はやはり、鱗片であった。

例え破片とはいえ、断面は鋭く、そこに速度を乗せ投げるとなると、下手な矢よりも恐ろしい。

進むと包囲される可能性もあり、そんな中右腕のハンデを負っていては龍神を探すことは難しいだろう。

そう考え、纏をする。

「変身」

まばゆい光が溢れたが、それは一瞬に過ぎず、あっという間に元に戻る。

炎が鎧の隙間からゆらゆらと薄く周りを照らす。

そこに映ったものは、赤。酸化した鉄のような赤黒さも所々見えた。

その周りを縁取るように切り傷、擦り傷、引っ掻き傷、陥没、抉れたりなど至る所に壁に傷があった。

激しく抵抗してできた物か、逆に攻撃されてこうなったか、両方か。

そう考えつつも、焦りつつ半ば走るように進む。


「殺されるような者じゃないはずだけど、まさか、そんなはずはないよな」


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