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最初のシャチサメとの遭遇からは特にエネミーに襲われることはなかったものの、同船していた人たちに質問攻めされた。

槍が何故あんな動きを見せたのか、そもそもそれは槍なのか、生きているのでは、あんな力を持ちながら初心者なんて言い張るなんて詐欺もいいとこだ…等など散々聞かれたし言われた。


「本土と呼ばれる大陸に着いたらできるだけあの力は使わない方がいいだろう」

大陸が陽炎に映るくらいまでの距離に近づいたころ、ライデンさんにそう告げられた。

「朱の大陸とは違い、本土には四方向からのやつらが流れてくる。その中には強いやつを自国の防衛力に使おうと思う奴らもいるはずだ」

あんたの力はとてつもないからな。

立ち去ろうとする背中は、海の漢という誇りと風格が見て取れた。

「そうそう、そうだ。あとひとつ」

「?」

急に振り返り呟いた。

「あの一戦後なぜエネミーに襲われなかったか、わかるか?」

わからない。

そう、素直に答えると笑った。

「周りにいた雑魚どもが、あの大きさのエネミーを一瞬にして「蒸発」させた奴に恐れをなしたんだよ。海のやつら情報はきっちり共有するからな」

「…まじか」

あれあの一撃により、深沢一真ことレン・ヒエンは大海に名をはせることになってしまった。

うなだれるしかない…

どうりで、甲板にいるときエネミーを見かけたと思ったら脱兎のごとく逃げ去るわけだ。


その後も無事に進み、本土へと接岸した。

では、とアカツキに同乗していたライデンたちとは別れて港を進む。

船の上では船自身の進む分が勢いを増していたが、おかでは潮風がゆっくりとしていて心地よく感じれた。

西に沈みかける太陽を見上げ、急いで町の方へと足を向けた。



海に近い方に宿屋が集中していたおかげで、日暮れまでに泊まる場所を確保することができた。

船から降りてすぐが野宿というのは避けることができ、安心しふかふかのベッドによりかかる。

「今のところ行く予定の島は…ここからだと「東」が近いか?」

本土の領地の端の方にしか各港は無いため、陸路を進んでいかなければならない。

降りた場所は本土の南だが、若干東寄りにあるところに着いたため東が西よりも近いことになる。

それでも結構な距離があるため普通の人は馬車や気球船なんかを利用する。気球船は大戦前後の欧州にあった飛空船に近いもので利用料も値が張る。その為、海の船同様の形態をとっていたり、馬車を利用するのが一般人の主な移動手段になる。最悪徒歩になってしまうが。

陸にもエネミーは出現するので、陸戦が得意なグロン達が護衛に着く。しかしグロン達も生活が懸かっているのでただではない。気まぐれな奴や強いエネミーに自ら突進していくような戦闘狂はただや格安で同行してくれる。そこで注意が必要なのは「気まぐれ」「強いやつとただ闘いたい」ことが前提で同行するということ。

焔の鳥にもらった金銭を移動費で大半を消費するのは避けたい。それに、向かわなければならないところは東だけではあらず。西、北も行かなければならないため、現在収入が一切ない状況である。

宿代は意外にも安かったのが救いだった。周りも安いことは安かったが、食事無しでの料金表示だった。泊まったところは晩朝の二食付き一晩のみの宿泊で食事抜きと同じ値段であったため、ここにと確定したのだ。



さてと、と腰を上げ食堂へと向かうと、そこは広くはないものの調理している所が直に見えるような形をとっていた。

カウンター席とテーブル席があり、テーブルは満席ということでカウンターに向かう。

野菜と肉のごった焼、海鮮丼などを頼み、平らげると周りから歓声が上がっているのに気が付いた。

「すごいやつもいたもんだ。あんな量の飯をすべて食ってくれるなんてな!」

調理場にいた主人が横に来ていた。

「賭け事まで始まるくらい盛り上がっていたからな」

そういって後ろを指でさす。その先を負って目線を向けると、勝ったもの負けた者の差がすごく開いていた。おそらく大半は食いきれないに賭けていたのだろう。

「あんちゃん、腹大丈夫かい?あんな数と量作っておいてなんだが、食べきったのは初めてでな。」

心配してくれる優しい主人でよかった。

「大丈夫ですよ。寧ろちょうどいい分量でした。」

ざわめきがまた起きる。

「…本当か?」

「ええ。明日から東の港に向かうつもりでしたから。」

そう言って部屋に戻る。

食堂の扉を閉めた後ろでざわめきと明日の朝の飯の量の賭け事の準備をする声が聞こえてきた。



複数注文し食べきったのが俺で初めてというと、他の人は必ず残していたのか、一品のみの注文しかしないのだろう。

確かに一品単位で一人前にしては「若干」多い気がしていたがそれくらいが普通なのだろうということと、残すこと自体もったいないと言うことが基本的になっていた育ちもあるだろう。

最近ではまずいからと残し、好きだからと糖質脂質塩分の塊を頬張る若いものが増えていた、というのは残念だと思う。

食の欧米化と飽和、五つの「こ食」の問題、などなど実際に見て来たものとしては「残す」ということはとても考えられない。食物アレルギー関係の話は別の問題になるため除外するが。

考えが脱線し始めたので、船の上でなったグロンの言っていた「戦士」について考える。

「あの時は確か槍が変形してなったんだよな」

壁に立てかけておいた槍を手にする。

手に伝わる感触はアルミのような柔らかいわけではなく、鉄と同じように硬い。

何故あんな形になったのか。軽く振っても変わらない。なら、と言ってみた。

「変身」

それは、一瞬だった。

太陽の光をも超えそうな速さであのシャチサメの時と同じ状態になった。

フルフェイスの状態なので、視界が少し狭く感じた。

「部分解除的なことできないかな?」

そう思い、頭だけ素の状態の姿を脳内に浮かべ、肩に入っていた力を少し抜いてみた。

間を開け、頭だけ解くことができた。

今まで船上で疲れが完全に抜け切っていないままだったのか、急に睡魔が襲いかかり始め、槍を元の形状に戻し、寝床についた。

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