島出2
俺とテツヤは龍神が言った通りに動かない為、錨を降ろす。
そうしているうちに、東の方角から、手漕ぎのこの船よりも数十倍と排水量のある船が列をなして向かっているのが確認できた。
「船、というよりも、軍艦?なんだあれ。穴?」
「長が、あそこから岩を投げたりして、害ある船を沈めていると、以前言っていたことがあった…」
「じゃあ、今東に「害ある船」というのが、この船ということか!?」
はっと気が付くと、恐ろしく思えてきた。
「今までの沈んで流されてきた船の欠片は」
東の島民によって沈められてしまった物だろう。
「遺、品は」
「ちゃんと本土の方へ運ばれたかすら怪しくなってきたな」
その事実が、テツヤにあまりにも大きなショックとなってしまった。
だから隠そうとしたのか?長は。
考えてしまっている間に進んだ事態の変化に気付くのに一拍空いてしまった。
青龍が溜めたブレスを艦隊に向け、吐いた。
炎なのだろうか、青い色をうっすらと発光させた線は、船体にあたると同時に爆発した。
そうして東を守護して来た艦隊が壊滅していく様をただ呆然と、眺めていた。
『呆気ない。それに奴らは己の欲しか見れなくなっていた。我は其れに嫌気がさしたのだ』
そろそろ他の地域からの移民などを計画していたような口ぶりをする。
嫌気がさしただけで自分を崇める地域の島民をほぼ壊滅させた、というのは良かったのだろうか。
「信仰してくれる人たちをほとんど魚の餌にしてよかったの?」
『また集めればよいこと。それに、奴らには神殿に贈った我からの忠告を聞かず、愚行を止めなかった。神罰として考えるのならばまだ生温いぞ』
聞くに、北を守護する「玄」と呼ばれている神は、領民をそのまま生き埋めにし、死ぬ方がマシな程の苦痛を味あわせる事すら厭わないとも。
『それに、この地に居続けるのには我の性には合わぬ』
…は?
『貴様に付いて行こうか』
はい!?
『まだ我の力の神髄を教えておらぬしな』
「えええええええええええ!?」
テツヤは突然叫びだした俺に驚いたらしく、ビクッとし後ずさっていた。
「ど、どうしたんですか?いきなり…」
「驚くかもしれないが、落ち着いて聞いて欲しいんだけど…」
「はっきり言いなさい。意気地なし」
何時かの夢の空間で見た中性的な姿をした龍神が自分の背後にいきなり立っていた。
「「わああああああああ!?」」
二人で叫んでしまった。怖いっての。
…正直、心臓止まるかと思った。あとで突然背後に立つなって言ったのは言うまでもない。




