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記憶

美人と言っても、男性女性というよりも、どっちつかずのように見える。

「何を見ておる。我の姿は…」

そう言った美人さんは自分の姿が思っていたのと違うことに気が付いた。

「何故だ!」

慌てているも、俺も驚いているのでいいっこなし。

「もしかして、その人は」


―そう、貴方の思っている通り。彼は水属性の長である龍だヨ。


彼。つまり、

「神に性別などあるはずなかろう。必要なのは別の大陸にある色欲煩悩しかない国だけだ」

ふん、とそっぽ向く。

『それよりも、お主は何度流されれば気が済むというのか』

「へ?!」


海岸に流れ着いてから意識がないため、今どうなっているのかがわからない状態。

身体が。

「うっそおおおお!」

虚しい響きが木霊した。



慌てたね。嘘と叫んだと同時に勢いよく起き上がった。

あれ?と間抜けな声が出たのは仕方ない。見知らぬ天井、見知らぬ部屋なのだから。

しかし改めて見渡すと、部屋の主は海が好きなのか、貝殻や、死んで白色した珊瑚、サーフボードらしき板などなどが所狭しと飾ってあり置いてある。

中でも、大切そうにしてあるのが、龍神をかたどった置物で、神棚みたいな形をした祭壇に置いてあった。

コンコンと軽いノック音がし、扉の方を見る。

「あ、起き上がれたんだね。よかった」

そう言いつつ入ってきたのは優男に見える人だった。

「大丈夫?お粥作ったけど、食べられそう?」

その手に持つお盆の上には小さい鍋と水の入ったコップが見えた。




「そうなんだ。神殿に行ってきたんだ。いいな」

この島に流れ着いた経緯を話すと羨ましいと言われた。

「流れ者は立ち入ることができないのに、入れるとは…」

羨ましがる彼は名前すら記憶が無いと言っていた。この島に流れ着いた時に所持していた物に書かれていた文字からとり、「テツヤ」と呼ばれている。

「羨ましいというよりも、生死を彷徨った気がするけど」

ははっと乾いた笑いをする。

しかしテツヤは似たような境遇だと言った。

「オレも同じ。君は名前を覚えているっていう差はあるけど、ここの荒れた海に流され生き残った事実は一緒だよ」

流されたものは大概渦潮やエネミーに喰われて生き残れないから。

その場合は、浜に流れ着いた一部しかない。片腕だけ、中身の抜けた仏さん、頭だけ、とか。

…そういえばいたね、エネミー。俺はあいつらに畏れられているらしいが。

「何故か、オレは奴らに襲われなかった。沖に出て船が転覆した時も。不思議でさ、尋ねてみたかったんだけどね、門前払いくらっちゃったんだ」


『貴様、「龍の鱗」を持っているだろう。そのおかげだ』


いつの間にか、彼「龍神」が、俺を挟んだショウの反対側にいた。

「龍の、鱗?」

『その、胸の奥にあるだろう。隠しても無駄だ。其れは我の一部なのだから』

胸に手を当て首を傾げるテツヤに説明している。

「なんで、姿が出るんだ」

ただ、俺は驚くしかできない。

鳥ですら人形を介してしか現れないというのに、意識の空間で見た装束を纏う人型だが、姿を現すことができている。

『あんな若造と比べんな。たった数百年っぽっちしか存在しておらぬ奴に負けるか』

意地か、頑固か判らんな。

「え、誰?キミの知り合い?」

こっちはこっちで天然か。



龍の鱗というのは龍神の一部と噂されており本物かどうか怪しいものが多いというのが一般だが、テツヤの身に着けている鱗は正真正銘本物だということが本人(?)によって証明された。

鱗はとても澄んだ青、というよりも深い海の色。三角形に近い形をしており、これでも欠片らしい。確かに神域であの大きさを見た事あるから納得できる。

『しかし、どこで入手したというのだ。我が前に鱗を落とすようなけん…怪我をしたのは随分と前の筈…』

喧嘩を怪我に訂正したな。

しかし、鱗がはがれる様な損傷をすること自体滅多にないそうだ。そりゃ神様が簡単に傷ついたら信者が減るかもしれないし、他の神様から下に見られてしまいそうだ。

「これは…どこで見つけたんだっけ…?」

鱗を拾った。その事すら忘れてしまったのか、もしくは記憶が無くなる前にすでに所持していたか。

『まあ良い。落ちた鱗はもう元には戻せぬ。無くさぬよう気を付けろ』

そう言い残し、姿を消した。

「なんだったんだ?今の…」

夢のようだというテツヤに俺は、これは夢なんかじゃないと説明するのだが、天然な性格のテツヤに理解させるのに時間がかかってしまった。


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