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蒼島2

慌てて槍を盾にし、受け止める。

その防御外から尾を薙ぐ。

盾の変換が間に合わず、受け止めきれずに吹き飛ばされた。


「がはっ」

肺に入っていた空気が吐き出される。

飛ばされた距離は結構遠く、巨大に見えた龍が小さく見えるほど。

引力にひかれ、壁面から落ちる。龍はその下にもう迫っていた。

くそと悪態を心の中でき、槍先を下に向ける。



あれからというもの、ウサギと対戦を毎晩、宣言通りやっていた。その際、ホーリーが審判役をしたり、混ざったりといろいろと正直なところ、へとへとになっていた。

睡眠と言えば普通は疲労を抜いたり、心身に休息を与える物の筈。しかし俺の場合何故か逆で、昼間活動するよりも疲れる。

船で寝泊まりしている間には何とかウサギの攻撃をすれすれで回避することができるようになったが、その次の手からがまだ駄目だ。


『次の手だけでなく、その先々をも見なければならぬ』

薄らぼんやりと姿を見せたホーリーだが、今は説教を聞く余裕がない。

着地した穂先には龍の口の中が見えた。

直前で槍を龍に対して平行から垂直の向きに変えたのだ。

「あっぶね!」

龍は顎を動かさずにこちらを睨みつけた。

『まさか、あのじっちゃんを傍らに置いているのか?』

「じっちゃん?」

誰のことだと思いつつ、槍を龍の口に残したまま、跳躍し距離を取る。

得物が無いため、拳を握る。

しかし先から見るだけで動かなくなった龍。

『…人の器を越えた者だからと、情が移ったのか?』

侮るな!と 再び向かってきた。この速さでは拳は当たるどころか、質量で圧倒されてしまう。なら、と右手を龍に刺した槍に向け、

「変身!」

と、炎を纏った槍を、「センシ」の姿へと変えた。



焔を纏った槍は、赤い鎧へと変化した。

「なんだ?」

今まではくすんだ灰色だったが、真紅に変化していた。

『火属性を得ていたか』

チッと舌打ちした龍は、青。多分水属性なのだろうか。相性最悪だという顔をしていた。

しかし、それでも攻撃の手は止むことは無い。

むしろ、威力手数共に増していた。

防戦一方だった先よりも状況悪化し、逃げの一手しか打てなくなった。


―こんな危険なことやらせんな。


ウサギの声が空間に響いた、と気がした途端、再び龍に蹴飛ばされた。

痛いという暇もなく、飛ばされている間に距離を詰める龍。

壁面がガラスのように飛び散る。破片の中で、俺は意識を手放した。


―交代だ。


―だネー。強すぎ。衰えてないんじゃないかナ?


―雛の次に若い。それに何よりも血気盛んだったはずだからな。


破片が砕ける奥に見える、鎧から見える瞳には、強い意志を宿らしていた。


―ウー君よりも血気盛んなノ?ちょ、此処の空間大丈夫なノ!?


―それよりも。


軽く握った拳を、突進する龍にぶつける。

衝撃波が見えるほどに空間が歪む。


―ちょおおぉぉ!


ヒカリの焦る声が聞こえたが、そんなこと関係ない。

寧ろウサギの方が焦っていた。


―時間がない。


ちりちりと指先などの末端の神経に負担がかかる感触がする。それが余計、ウサギを焦らせる。

例え、前回の魔神戦よりはましになったが、まだ不安定には変わりはない。

それはレンが「人間の器」を持ち続ける限り払拭されることは無いことなのだから。

しかし、「人間の器」であるからこそ、「再び」この地上に存在を許されたもので、ウサギはこの壁を乗り越えなけれはならないと考えている。それはヒカルも同意している。


―あと一撃で、沈める!



壁を蹴り、殴ってよろめいた龍に、左ストレートを入れ、文字通り沈めた。

着地し、陥没した所に顔を出して確認する。


―よかった。間に合った。


そう言って倒れた。


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