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出航

鳥に説教を喰らい、うつらうつらするものの寝れないままの頭で考えた。

鳥は気が済んだのか、人形から意識を離し、静かになった。

槍を変形させ「あの姿」へ変わるのに、「変身」の掛け声だけでは何か物足りないと思う。

睡眠できていない頭で考えることは碌なことは無い。そう知っていても、考えてしまう。

幼児からずっと、戦隊モノやヒーローもの、変身もの、何とは言わないが制服戦士など見続けていたからだろうな。

身体は睡眠を要求しているので動けないが、脳みそは働こうとするので、考えるだけ考えようとする。


そして、結局起きたのは午後の間食の時間の少し前。

なにかしら胃の中に入れなければ調子が出ないため、寝ぼけ眼で船の甲板から銛を投げて、海面から飛び出たところの魚を獲った。小さかったが、それでも足しにはなったので文句は言わない。


昨日の少年たちは、船体側面に着きまくったフジツボを獲って焼いていた。

いい匂いがするも、自分は何もしていないために、分けてもらいに行くことに躊躇った。

鳥の説教が無ければ、など考えるも、あとの祭り。


その後、八つ当たりのごとく昨晩考えた変身ポーズを試し続けた。

しかし、いまいち自分で納得することのできるものはなかった。



今更ながら、この次元にある調味料は、似たような作り方をするものから、材料から全く違うものまでさまざまあると言うことを知った。

それは、船から降りて、船員の人達と共に出航前に必要な資材を購入していった時だ。

街の人たちはまだ海が荒れているから出航は延期にした方がいいと口をそろえて言っていたが、船長たちはそれでもといって、心配してくれていることに感謝し無事を祈っていてくださいと言って店を出ていく。

荷物持ちとしてついてきたものの、結構な量になったため一時船に預けに行くことにした。

その時に景色の奥の海を見るとその先に何人たりとも通させないという意思がある様に錯覚するほど、暗闇に沈んでいた。

心配して様子を見に来てくれた船員に声をかけられるまで、見続けていた。



出航当日。

何故か埠頭を、今から出る船を一度でも見ようとする人たちでごったがえしていた。

「前に出た船が帰って来ないまま、沈んだという報のみ伝わってきたので、沈む前の勇士を眼に焼き付けておこうということなのでしょう」

なにそれ、縁起でもない。

甲板にいた俺にそう説明してくれたのはハヤトという船員だった。

一介の船員だというが、彼の同期である船員が、沈んだと言われている船に勤めていたらしく、今行方不明で家族親戚たちから国に捜索願が出されている。

どうしてるかな、という彼の声は掠れ、目尻には雫が見えた。

この先にある群島のどこかに流れ着き、無事生きているといいなと言って、彼は甲板を後にした。



船の進み始めは、明るく、日差しが心地よく、昼寝がしたくなる陽気だったが、一変。

どんよりとした黒雲がたちこめ、ぽつぽつと降り始めた。

黒い雨、が。

火山灰混じりの雨かと最初は思ったが、違う。明らかに「普通の雨」ではない。

原因は解らないが、数十年前からこんなふうな雨が降っていると船員たちに聞いて回って分かった。

数百年前からなど桁が一つ二つ変わる誤差はあるものの内容はほぼ同一だということも。



…焔の鳥さんよ、これ、ただの「お使い」じゃないでしょ。神様からの「御使い」だから、前いた次元であったような「お母さんに頼まれてこれを買いに」なんてレベルではないことを想像していた。しかし、初めてのお使いをする少女がヒヨコにも満たないレベルじゃない?なんて思い始めましたよ?


そして、その視線は暗黒と渦巻く雨、奥に鈍色を光らせる稲妻に向いていた。


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