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青海1

パーティ解散後は、各々(おのおの)で別れたが、俺はどうしたものかと悩んでしまう。

こちらの次元には伝手が無い俺はどこに向かうともなくふらふらした。

丁度公園らしき広場があり、腰を下ろして休むと、食欲をそそる肉の匂いが漂ってきた。

そして、食欲に負けた。

焼きたてアツアツの肉串を食べる。齧るほど肉のうまみが溢れる。そういえば祭りなどで出てくる屋台の飯もこんな感じだったな。なんて思う俺に、遠くで悲鳴のような声が発せられたのが聞こえた。


その悲鳴と辿ると、港湾施設のような少々開けた場所に出た。

蟹と龍と蝙蝠や鮫と象、クワガタムシとカブトムシと狼がいっぺんに戦場にしていそうな所だな。

そう初見の感想を持った場所だ。

そこには身なりの良さそうな逃げる男共と、それを追いかける貧相に見える子供たちだ。

男共にはまだ幼さの残る、追いかける子供と年も近いものもいた。多分先の悲鳴はその子供のものだろう。


なにかしらのトラブルはついて回るモノなのか?



大人と追いかける子供の間に割り込む。

「なんだ、貴様!」

「もしや、この小猿どもの仲間か!」

「逃げろ!」


「あんちゃん、邪魔」

「大事な金ずる、逃がすつもり?」

「殺っちゃってもいいよね?」


なんとまあ、子供の方が物騒な発言。親の顔が見てみたいわ。どういう教育したらこんな餓鬼ンちょに育つのか。いや、最近の「親の方」が怪物だった覚えが。それはあっちの話なのだが、やっぱり次元が違ってもこういうことには変わりはないのか。

選択肢が何所かで違った世界なのかもしれないな。

そんな考えに耽っていたが、間に立つだけでも結構効果はあったみたいだ。さっきから一歩も動いていない。動けないと言った方が子供の表情からして正しいのかもしれない。

背負っていた槍に巻いていた布を取ると、子供はやはり子供らしく、蜘蛛の子を散らすがごとく逃げた。

大人の方は腰が抜けてしまい、動けなかったそうだ。



その男たちから、追われるまでの経緯を聞いた。

「ただ、乗船券を取って出航までとまる宿を探していただけなんだ」

「そのところに、先程の子供が入り込んできて、「その船はオレたちのなんだ。だから、券返して」といってきたのだ」

「闇ルートで仕入れずに正規ルートで10日も待って手に入れたもので、離す訳にもいかず…」

「で、取られないように逃げたら、案の定追いかけてきた、と」

そういうことらしい。

何の目的で行くのかと聞いたら、彼らは商人だと言う。

観光目的もあるが、商品の仕入れと、自分の売り物を売り込みに行くのが主な目的だと話してくれた。

こちらが逆に「東の諸島」に行くのかと尋ねられ、素直に答えようかと思ったが厄介ごとに巻き込まれそうだったから無難に「ここら辺の観光」と答えたら、ならいずれ必要になるだろうからと乗

船券を取るためとかのコツなどを教えてくれた。

そして、もし同じ船に乗れたらありがたいなども言われた。

このおっさんら意外に図太い根性あった。商人はそれくらいないといけないのか?



教えてもらった乗船券の発券売り場へと足を運ぶと人混みがすごかった。

なんでも、「東の諸島」付近の海域が荒れていて、通常便を出港させる事も難しい状況になっていると。

大型台風の直撃が何日も続くような豪雨で、今までに無い荒れ様。挙句の果てに地元の漁師すら手を焼いていて、神殿やその付近の小島は水没しているようなニュアンスの会話がちらほら聞こえる。

神殿にいる神職や神子が仕事していないとは限らないが、無事でいるとも怪しいそうで、先の商人たちの出る船は臨時便で、「諸島」の一番西で「本土」に一番近く存在する島までで泊まる。

商人たちは幸運だったのだろう。それか、意地でもとゴリ押ししたのだろうか。

「まあ、いいか」

状況が改善されなければ自力で行けばいいだろう。

実に脳筋の発想だが、この際仕方ない。

だってこの港の宿代が全てべらぼうに高いから。一泊でもしようものなら、少ない懐が跡形もなくなるほど。鳥にもらった金銭は少なくはないものの限りがある。


そんなわけで俺は、貨物船に朱の島から本土に渡ったやり方と同じように、「護衛」という目的で同行させてもらおうと考えた。

船の管理者もしくは船長、副船長に話がしたかったのだが、いずれも所在が分からずじまいで一日を過ごしてしまった。

…ちくせう


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