聖3
※今回はウサギ視点
「相も変わらないネ。おじいちゃん」
俺の横のヒカリが見て言った。
「おじいちゃんという名ではないだろ。直に言ってみろ」
「えー。そんなことしたら私の存在ごと消されちゃうヨ。私はまだ、消えたくありませーン」
聞こえないふりしてそっぽ向くも、レンから伝えられてくる視覚情報では、ヒカリのことを見透かしているような顔をしているホーリーがいる。
「早くあやまったほうがいいだろうな」
ぽつと呟いたことが聞こえたのか、視線に気づいたのか、うんとヒカリが答えた。
封印されてから数千年ぶりの筈。なのに当時のまま変わらない剣術を使い、レンを逃げの一手しか使わせないようにしている。
出口からの撤退という選択肢は「ない」
RPGであるボス戦と似たようなもので、クリア必須の試練だから「逃げる」ことは不可能。
さて、どうあの「堅物」と同族と眷属に言われたホーリーを取り込むか。
俺たちは今回参加できない。レンの為と、鳥に頼んで解いてもらったのだから、中立に立たねばならない。
強制的に物理でレンの身に取り込むこともできる。だがしかし、それではレンの中で対立をしてしまう可能性がある。まだこれでひとつめだというのに、そんなことはしたくない。
それに対立からの「分離」になったら人の脆弱な身体のレンが耐えきれるとは思えない。それは危険としか言いようがない。
堅物以外にもやっかいなやつはいる。自由奔放すぎる4人とホーリーと対極のヤツ。
てんでバラバラな奴らだが世界の危機にはしっかり結束する4人は、どうこうなるが、対極のやつだけはそうもいかない。「赤紅に染まる戦場」という所で死闘と呼べる「死闘」を繰り返して、堕ちた奴なのだからな。
その為にホーリーだけは絶対に納得してもらってから「力」になっていただきたい。
天上のやつらに押し付け、もとい、渡され託されたのだからしっかりしなければならないのだ。
考えに沈んでいたらしい俺の目の前で心配そうにのぞきこむヒカリ。俺の苦労も知らずに。
あいつはただの戦闘狂だと認識している様だが、そんなことはない。
そうこうしているうちに、佳境に突入したようだ。
*
人間であることを忘れない。
―そう約束したらしいな。
まあ、と頭を掻くレン。
「そのために人間を守る、とも」
まあ、あのホーリーも一時的だが納得してくれたみたいだな。
聖の力の概念となり、レンの中に納まったが、
『しばらくしても、契った事を忘れずに励め。我が約束を違えたと判断した時は容赦なくその身に叩きこもうぞ』
と、とても厄介なことを言い残してやがった。
それはそうとおいといて、重傷に近い怪我を負っているが五体無事に済んだので良しとしよう。
この穴も塞がなければならないので、地上に戻ることになった。
アキラが出口で中に入ろうか否かと、心配して右往左往していた。
切り傷など有り余る体だが無事だと分かると安堵していた。
そして、寝ぼけ眼の3人の目を一気に覚ますことができたそうだ。あまりうれしそうではないようだがな。
―…これは、まだ一つ目だと言うことを忘れるなよ。
独り言のように、告げる。
そうだ。雛とそのまわりの「お使い」の先にいる者たちからの頼まれごとなのだから。
しっかりしてもらわなければ、俺たちの意味がない。
治療をしてもらっているうちに重傷から中傷と言えるくらいまで回復していることは告げないで置いといたほうがいいだろうな。そちらの方が、酷というものだからな。
あいつはこの次元の基準の人間から外れてしまっているのだから。




