聖2
再び穴の中に潜り、昼に通った道を行く。
そして、広間の入口で立ち止まる。
あの二人は大丈夫だと言っていたが、いざ目の前にするとなると緊張する。
―さっさと中に行け。
―本当に大丈夫だから、中には入りなヨー
二人の声が頭に聞こえる。
右手をすっと入れる。おっかなびっくりだが、何も起きないことを確認すると、足を入れる。
中に入りきってから、中を見渡すと、何気に広い空間になっていた。
―空間の大きさなんて気にし始めたらきりないヨ?
ヒカリが苦笑しているようだった。そういえば、こちら側に来た直ぐにいた場所ですら、距離というよりも「長さ」という概念が怪しいものだったのだ。
―早く、モノリスに触れろ。
ウサギがモノリスといったオブジェは近くで見ると、2、3メートルくらいの大きさで鉄板のような質でできてそうだ。
手のひらで触れるとひんやりしており、本当に金属のように思えた。
―そこに書いてある文字を読んでみろ。
ウサギがそこにという先には、タイガの言った通りだと「超古代の文字」という事になる。
「読めないんだが」
必然的に、地球の現代ではない文字は読めない。
―落ち着いて、字をよく見るの。そのうち読めるようになるヨ。
ヒカリは落ち着いていると言うか、なんというか。
だが、じっと見つめ続けていると、書いてあることがなんとなくわかる気がしてきた。
―その文字は貴様が昨晩詠んだ文字と同系列の物だからな。読めなかったらあの雛が仕事をしなかったことになる。
そんなこと言っていいのか。一応焔の鳥とはいえ神にあたる存在だし。
―その概念の一部である炎槍を纏う貴方も十二分に突飛な存在だけどネ。
あの槍って鳥の一部だったのか。
早く読めとウサギから催促がきたため、詰り詰まり読み始める。
*
結構長く、読みにくいものだったため、思ったよりも時間がかかってしまった。
「睡眠時間残ってるかな…」
そんな心配をして気を抜いてしまった時、背筋が凍るような気配を感じた。
『我の眠りを妨げたのはおぬしか。』
狩衣のような装束をまとった人物が真後ろに来ていた。
反射的に距離を取る。
『そうか。小童どもが朱に言いつけたのか』
小童?
「もしかして」
『今回はこのような餓鬼に任せろと言うのか…無茶を申す』
すらっとどこからか大太刀を取り出し、俺に向ける。
『ぬしの様な餓鬼に我を扱える物か、否か。見極めさせてもらおうぞ』
刃に光を宿しながら、間合いを詰めてきた。




