影人2
親友の形だが真っ黒。
それに俺が元いた、そして二度と帰れない場所にいるはず。
「なのに、なんで、ここにいる…」
呆然としか言いようがない。
次元を渡って生きていたのは俺が初。つまりほぼ確実に100%命を落とす。
真っ黒い友人、海藤司に似た奴はすっと手のひらを俺の目の前に突きだす。
瞬く間に吹き飛ばされ、背中を強く打ちつけた。
肺から空気が一気に出てしまう。一時的とはいえ、身体から力が抜ける。
ふらつく俺に再び手のひらを向ける。
吹き飛ばされると、その先にアキラがいて、一緒になって数メートルほど後ろに地面を擦り続けた。
「レン殿、「センシ」に何故ならないのだ?それに、彼奴は「魔神」。素では敵わぬはず」
「…!そうだ…」
アキラには魔神は「魔神」として見えているような口ぶりをしていた。
俺だけか。なんであんな、友人の姿に間違える様なことをしたのか。
「恋しくなったのかな、あっちが…」
口元が気付かないうちに緩んでいたらしい。アキラに、気でも狂いおったかなどと言われた。
「狂ったんじゃない。俺は、正気だ。正気に戻った!」
なんで惑わされていたんだろうな。相手は魔神。警戒していたはずなのにな。
言っていたじゃないか。みんな認識していた形は違うと。
俺は、どこかで友人に会いたいとでも思っていたのか。
「変身」
それともなんだ。傷つけたくなかったのか。
そう思われかねない行動だったのだろうか。
そんなの、どうでもいい。吹っ切る。
その為に、今は仮面の姿をする。
一番古い記憶のある時からずっと一緒にいて、仲の良かった親友。
さよならと言いそうになりながらも、剣を造り、駆け出す。
アキラも、横から支援してくれている。
叩く。絶対に。
今は親友を親友と思わないことにする。あれは「エネミー」。その一種である魔神。
すまん、司。二度と会えないが、こんな、殴り合いなんてしたくなかった。
殴り合いなんて言い表せないほどの応酬を繰り返す。
やはり「魔神」と称すだけあって、関節の向きなんかは一切無視されている。
普通の人間には体現できない動きで翻弄していく。
だんだん押され始める。
「ヒーローもののスーツのように纏っている」槍の至る所に目に見えるように傷が増えていく。
見ればアキラも似たような傷を負っていた。
このまま、負けるのか。
死ぬのか。死…?
―キミを死なせはしないよ。
死の淵ぎりぎりまで立たされかけたその時、そう聞こえた。
声は中性的に聞こえたものの、姿は無い。
チリンと風鈴のような、鈴のような音が周囲に響く。
『なぜ、貴様が!あの時、魂ごとすべて「我ら一族」が滅ぼしたはずだ!どこだ、何処にいる!』
魔神が何か叫んでいるが、内容がうまく聞き取れない。
因縁の相手なのか目の前に敵である俺がいるのにかかわらず、魔神はせわしなく周りを気にし始める。
―私の魂の欠片を受け継いだキミなら…
は?!
なに言ってんだ、この声の主。
―気になるよね、多分。でも、今は目の前に集中して。
どことなく誰かの声に似ている。
誰か、誰だっけ、なんだ、この脱力感。
力が入らなくなる。致命的だが、原因がわからない。
意識が遠のいた。
*
その後、アキラによって、タイガたちと合流する前に救出され、先の戦い方はなんだ、どういう力なんだ、どうやってやったなど、問い詰められた。だが、答えられるわけがなかった。
記憶が無いのだから。




