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歯車。  作者: 繭
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不謹慎な願い事。

「とりあえずさ、野田なら日にち伸ばし伸ばし誤魔化せばそのうちハンター自分で買うんじゃね?あいつんち金持ちだし。」


翔太はそう言ったけど、それより俺の嘘が野田に見抜かれてるんじゃないか…

分かってて貸してくれと言ったんじゃないかな…

そんな事も思ったけど、ついてしまった嘘を解決出来る案もある筈がなく…


いつもの自動販売機の前で翔太と別れた。

「そうだな…。ありがと翔太。

また明日な。」


帰りたくもないオンボロアパートに帰ると、俺の家の前で大家と優美が何か言い合いをしている。


「もう何カ月も払って貰ってないよ!!どうなってるのよ!!あんたん家のおばあちゃん、お国から手当て頂いてるんだろ?なんで払えないの?」


腰はかなり曲がっていて70代くらいの大家だが口調は強く、子供だからと言って甘く見てくれる事なんてなかった。


「ごめんなさい。祖母が帰宅したら強く言いますから、今日の所は帰ってください。」


優美が涙目でそう言った。

俺は隠れた物陰から出て行く事が出来なかった。


優美…すまないけど乗りきってくれ。

そう思って息を止めながら物陰に居た。

ずるいのは分かってる。


妹が惨めな思いしてるのに俺はどうもしてやれない。


しばらくすると、大家が歩き出すのが見えた。

今日は諦めてくれたみたいだ…。


何も知らないかの様な顔で玄関に入ると優美はケロッとしていた。


「お兄ちゃん!影が動いてたよ」

「え…。」


どうやら隠れていた事が分かっていた様だ…。



「なんでこんなに苦労するんだろうね…

うちみたいな家庭って地球でどれだけあるのかな?だけどさ、地球でって想像したらうちなんてマシなのかな?不幸ランキング何位かな?ね?!お兄ちゃん?」


優美は笑っていた。


優美は俺とは違って結構前向きな性格だった。父親が違うからか俺には似てなくて俺はそれさえ羨ましく感じる事がある。


「それとさ、お兄ちゃん!明日あの日だよ。」


俺はカレンダーに目を向けた。

赤い丸が付いていた。


そうだ!!明日はあの日だった!

テレビでも話題になっているあの日。

地球が消滅すると有名な予言者が言っていた日が来る。


優美は笑ってGOODサインを俺にだした。

俺も同じ様に親指を立てた。


世間はその日を恐れて居たけど、俺たちはその日を楽しみにしていた。


不謹慎かもしれないけど地球が終わっちまえば家賃を請求される事も無いしオンボロアパートは無くなるし、何より皆が同じ様になっちまえば俺たちだけ不幸な訳じゃなくなる。

そんな事を本気で思っていたのだ。



「地球は消滅しないけどみんなの家は壊れたとかがいいよね?死ぬのはやだもんね?食べ物は平等に支給されるのがいいよね?」


優美がそんな事を言うから俺はずっと笑っていた。




「でもさ、本当に明日地球なくなるのかな?

予言者なんて信用できないよな。」




そんな話しをしていると優美と俺の前に水が落ちてきた。


雨漏りだ…。


「わ!やば!お兄ちゃん雨降ってきたわ!」

優美は手慣れた手つきで鍋と皿とコップを持って雨漏りする場所に置いていった。


もうこんな事が何度もあるんだ。

祖母はいつもパチンコで帰りは遅いし。


なんなんだよ!!



あーーー!叫びてぇぇーー!




本当地球消滅お願いします。

神様、予言者様!!!




ポンポン、トトッ、ピチッ。

ポポポン、ピチッ、トトッ。


雨をうける鍋や皿達がバンドでも組んだんじゃねーか?と思うくらい、軽快なリズムを刻んでいた。



その音を聴きながら俺は優美とくだらない例えばの話しばかりしていたんだ。








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