回らないでいいのに回る
人生を回してる歯車があるとしたら俺はその歯車の設計士にでもなろうか。
もっといい人生の歯車を作ろう。
めちゃくちゃ良くなくてもいい
スムーズに回ってくれればいいんだ。
だって俺の歯車はとんでもない設計ミスだと思うから。
正夫!起きなさい。
聞きなれた祖母の声がする
俺の目はまだ開かない
開けたらまた同じ朝が来てまた同じ毎日が始まるんだろ?
「ちょっと!お兄ちゃん!邪魔。
コタツで寝ないでって言ってるじゃん。」
妹の優美が俺を蹴り上げて仕方なく重い目を開いた。
あぁ、また始まるんだな。
俺のくだらない1日が。
腹はすごく空いていた。
だけど食いたくないんだ。
2日前のおでん…
匂いだけでやなんだよ。
朝からまたかよ。
これだけで気が狂いそうな程嫌な気分になれる。
周りは言うんだ。
ご両親無しでおばあちゃんが1人で育ててくれてるんでしょ?素晴らしいおばあちゃんじゃない!将来恩返ししないとね。
は?飯なんて3日に一度作るか作らないか。
おでんや煮物の日なんて3日は同じの続くぞ?育ててもらってる?パチンコ狂いで飯もろくにないこの環境が?それでも施設に居ないだけマシなんだろうか?きっとそうなんだよな。
俺たちには両親は居ない。
父親は知らない、母親は優美を産んですぐ祖母に預けて出て行ったそうだ。
俺はその時2歳、記憶は何もない。
それからずっと祖母と妹と俺の3人暮らしだ。
俺は一番味が染みてなさそうなコンニャクを一口頬張りながら重い気持ちのままきしむドアを開けた。
この辺りでも珍しいくらいのオンボロ長屋のアパートを出て1日が始まる。
7時35分、そろそろ急がないと翔太があの角曲がっちまうな。翔太は何時迄も待ち合わせの自動販売機に同じ時間に来る。
今日はギリギリセーフで待たせなくて良さそうだ。