どっちが大切か。
※この小説は風祭トキヤ先生とのコラボ作品です。中学生編は風祭トキヤ先生の方から投稿しますので、お楽しみに!
僕の仕事は初めと終わりです。風祭先生には中を担当していただいています。風祭先生は元しょおーうた先生です。
小学校4年生の二学期。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁああ」
泣いたのは、クラスの落ちこぼれだった僕だった。
「うわぁ。三田のやつ泣いてるぜ」
「だっさぁ。良く泣けるよな」
「キモッ。あんなんで恥ずかしくないの?」
クラスメイトからの揶揄が聞こえる。
三田というのは僕の名前・三田孝之のことだ。身長は138センチ、体重45キロ、顔はブサイク。三拍子が揃ったチビポッチャリな僕は小学校でイジメの対象となっていた。イジメの内容は僕の物を隠す・壊す、悪い噂を流すなどで肉体的な暴力はでなく精神的な暴力だった。
「おい、三田!」
そこには、クラスのリーダー格である清水凌駕だった。スポーツ万能、成績優秀、高身長でクウォーターのイケメン。
そんな彼が話しかけてきた。
「俺と遊ばないか」
「え?遊ぶ?僕なんかと?」
「あぁ。お前と」
「いや、いいよ。僕と遊んでもつまんないだろうし」
「そんなことねぇよ。遊ぼうぜ!」
「そこまで言うなら」と僕は徐に席を立つ。
◇◇◇
慣れとはすごいもので、数回の遊びで僕は清水と親友のような関係になっていた。
「なあ?」
「どうしたの?清水さん」
この『さん付け』は僕の癖だった。
女子だろうと男子だろうと、特に自分より格上と判断した人には『さん付け』で呼んでいた。
「三田ってさぁ面白いよな!」
「そ、そうかなぁ?」
「いや面白いって」
「そっか…ありがとう!」
「今度から孝之って呼んでもいいか?」
「あ、うん。分かった!」
僕達は誓いの握手をした。
清水さんは会ったら毎回話しかけてくれる優しい子だ。その影響か、僕はあまりいじめられることは無くなり、前のような怖い雰囲気には無くなった。
「孝之!サッカーってできるか?」
「サッカー?僕はスポーツ得意じゃないんだ。特にサッカーは...幼稚園の頃嫌な思い出があってね。」
「なら今克服しちゃおうぜ!」
清水さんは僕に向かってボールを優しく蹴った。僕は足で止め、蹴り返した。『苦手だったサッカーも清水さんとなら楽しい』そう思えた。
◇◇◇
偶然テレビに映っている清水を僕は見た。
「あ、清水さんだ」
サッカーのクラブユースの特集だった。
十年に一人の逸材と言われていた清水さんはテレビに取り上げられることもあり数回テレビで見たことがあった。
「今1番楽しいことは何ですか?」
「サッカーもそうですが、新しい親友ができ、そいつと遊ぶことが何よりも楽しいです」
「何して遊ぶのかな?」
「スポーツも一緒にやったりするし、ゲームもやってますよ」
僕の目には涙が自然に溢れていた。こんなにも清水が僕のことを思ってくれていたことに涙が溢れた。
「清水さんありがとう」
僕は小さくそう呟いた。
◇◇◇
3日後のの日の朝。
清水さんが、遊ぶ約束をサボったから僕は少し怒っていた。
「おっはよ〜」
何気ない顔で登校してきた彼に文句の一つでもいいに行く。
「清水さん!なんで昨日来なかったの!?」
「色々と予定があったんだよ。ごめんな」
「何時間も待ったんだよ!電話の1本くらいくれてもいいじゃん!」
「…ったく。うっせえな謝ったじゃねえかよ!」
「開き直ってんじゃねえよ!あれで謝ったつもりかよ!」
「うっせえな!キンキンキンキン騒いでんじゃねえよ!さっさとどっか行けよ!」
初めての仲違い。今までの交流にそんなことは一度も起きなかった。
友達なら喧嘩なんかしちゃいけない。友達がいなかった僕の考えは、友達=いつでも仲良しだと思っていた。
◇◇◇
キーンコーンカーンコーン。
チャイムがなり、授業がはじまっが僕達はまだ喧嘩したままだった。
「えーこの分数の計算問題...三田、黒板にかけ」
僕が苦手な算数の問題だった。特に分数に関してはてんでダメだった。冷静を装って問題を解き始める。
「は、はい!……こうですかね?」
「ちげぇよばーか!」
先生が話すより先に清水さんが暴言を吐く。
もう、あのときのような仲むつまじい会話できない。そんなことを考えるほどにまで発展していた。
「は?ふざけんなよお前!」
「てめえが馬鹿だからいけねえんだろこのバカ!」
「ふざけんな!!!!!!」
僕と清水は殴り合いにまで発展してしまった。
「授業中だぞ!いい加減にしろ!お前ら放課後に職員室に来い!」
僕の担任が、二人の手を引き離し、席に座らせた。
◇◇◇
授業が終わり、僕は職員室にトボトボ歩いていった。
「遅いぞ。三田」
「はい。すみません」
嘲笑うように反対側で清水さんが笑っていた。今回の件は僕のせいではない。それだけを訴えようと決める。
「今回の件だがまず三田から話を聞かせろ」
「はい。清水さんが昨日遊ぶ約束をしてたのに電話の一本もくれずそれを守りませんでした。」
「そうか。清水それは本当か?」
「ええ。まあ」
「なぜだ?詳しく言ってみろ」
「家の用事です」
「その内容も聞かせてくれ」
はあ…と清水が息を吐いた。
「おばあちゃんがぶっ倒れて病院行ってました。」
「なんだって!それは本当か?」
「ええ。まあ」
「三田。お前の気持ちもわからんではないが、清水にも事情があって約束を破ったんだ…許してやれ」
「いやです。電話の一本もよこさず友達の約束を破っておいて…」
「孝之、お前にいい言葉を教えてやる」
『命と遊びの約束どっちが大切だ?』
僕の心にはその言葉が胸いっぱいに響いた。
そんなの命に決まっている。一時の遊びよりも家族の命を優先するのは当たり前だろう。反論できる筋合いはないが、それでも意地がひくことを許さなかった。
「で、でも!電話の1本くらい!」
「病院では携帯禁止だったからな」
「そんなの…あんまりだよ…」
僕は泣き出してしまった。
自分の意地が通らなくて悔し泣きしたのか、訳も分からずに泣いたのか、自分が恥ずかしくなって泣いたのか今になっては分からない。
「あの時みたいに俺はお前を助けないぞ。だってお前は約束と命の区別もつけられない『ゴミ』だからよ」
僕は何も言えず呆然としていた。
裏切られた。反省の言葉ではなく憎悪の言葉が口からでそうになったからだ。
「お前らは最近、仲良しだったろ。これからも友達でいろよ!仲直りに二人とも謝れ!」
先生の言葉にも腹が立った。実際に僕は何もしていない。何があって来れなかったのかを問いただけ。しかし、先生の言い分では悪いのはお前だと言われている気がしてとにかく腹が立った。
「僕が...悪いのに...清水さんの...せいにしちゃって...ごめ...んなさい...」
泣いているせいで呂律がグチャグチャになる。
清水さんは何も言わずその場所から立ち去っていった。小学生でいられた残り約2年間、清水さんとは口をきかなかった。
そして、僕と清水さんは、中学で再び出会うことになる。
To be continued.
初めてのコラボで緊張しました。あまりコラボされている方も多くはないと思いますが…。中学生編もお楽しみに。あくまで短編ですよ!