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第二章 参


〈先ずは、練達の武芸者どもを倒して名をあげれば良い。そしてその為には、個人の能力を全て駆使するのは当然の兵法〉と言う叔父の言葉。ここまでは十分納得している。


しかしその〈個人の能力〉とは"胸を揺らしてスキを作る"というアホ思考丸出しの作戦だった。


最初はそんな作戦に引っかかる輩などいるわけがないと、たかを括っていた。


ところが叔父の凄いところはここからで、この作戦を成功させる為には(要するに胸に注意を引かせる為に)道場の壁の色から、道着の考案、サラシの素材と巻き方、たすきの掛け方、立ち合う時刻まで網羅した緻密な策略を考え出した。


そしてさらには、立ち合い自体を歌舞伎や芝居のように見世物にしてお金を取り、商売として成り立たせている。


立ち合う相手も"勝てば嫁と道場がタダで手に入る"と噂を流しておけば事欠かないし、負けた武芸者達もまさか"胸に見惚れていて負けました"と言えずスゴスゴと引き下がるしかない。


 もっとも近頃は公然の秘密と化していて、それ目当てで挑んでくる不届きな輩も多いのだが。

 しかし 一見して完璧のようなこの作戦にも大きな穴がある。


この技は私以外に使えない。

 教えられるモノでもないので、未だ門下生は一人もいない。そして無双のウワサが高まれば高まる程、私の婚期が遅れる。お先真っ暗だ。


「もう十分稼いだでしょう、いつまでもこんな馬鹿なマネが出来るとは思えません」

「フィーゴはどうなる? お前が良くてもフィーゴはそうはいかん」


私は嘆息してまぶたを閉じた。それを言われると非常に辛い。


凱門フィーゴは今年で十歳になる腹違いの弟だ。私と違い学問に秀でているが、生まれつき身体が弱く、一年のうち半分は床に伏している。


叔父は総じてだらしない男ではあるが、酷い男ではない。病弱なフィーゴのために医者を招いたり、高価な薬を買ったりして何とか身体を治そうとしてくれている。

過剰なまでのお金への執着は、フィーゴの事があるからに他ならない。


「お前の言いたい事は理解できる。オレだって出来るだけ脳を使わないで生きて行きたい。しかしだ、フィーゴの身体のことは金の問題じゃない。だろ? 」


分かっていたことだけに、真正面から現実を突き付けられると、自分の言っている事がひどく子供じみていると思い知らされる。


「薬代とはそんなに高価なのですか? 」

「あーそうだなぁ、大体コレぐらいかかっている」


 顔の前で指をざっと立てて見せる。


「……っ! そんなにですか⁉ 」

「帳簿はつけてある。見るか? 」


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