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第一章 九

「ルルディ大丈夫? ケガはない? 」


終始ゆっくり歩くロバロを無理に急かし、僕らは町外れにポツンと佇む薬師のオババのあばら家へとたどり着いていた。


ロバロに掛けていた〈豊穣の恵〉亭の大布を剥がし、隠れていたルルディの無事を確認する。ロバロに荷車を引かせて注意を集め、背中に乗っているルルディから意識を遠ざける作戦はなんとか成功していた。


並外れて大きなロバロと小さなルルディだから上手くいったのだろうが、今まであんな緊張を強いられた経験は無かったので、あれを乗り越えられた事は僕の中でとても大きかった。


「ルルディ? 」


返事がない。


僕は慌ててロバロからルルディを引っ張り降ろし、ぐったりしたままの彼女をそうっと地面に降ろした。

毛長牛はあまり人に慣れないが、ロバロは特別なのかルルディの言う事をよく聴いていたし、その行動にも敏感に反応している。


その為かぼくは勝手に、ルルディの危機にはロバロが何かしらの行動をすると思っていた。逆に言うとロバロがおとなしい時は、ルルディの身に危険はないのだと油断をしていた。


呪いがなんらかの影響を体に与えた所為で、気を失っているかも知れないが、もしかしてブブキの曲刀が、彼女を傷付けていたら、一刻も早く手当をしなくてはならない。

しっししかし、気を失っている隙に女の子の身体を、みっ見るなんて事をやっても良いのだろうか?


「ルルディ? 」


軽く肩を揺すってみる。何の反応もない。


今度は薄眼を開けていないし、本当に気絶しているのかも……

……

……

ーーコレは彼女の身を案じてやる事で、決して他意があってやるんじゃないぞ。


 違うから、断じて違うからなあ。


 僕は外套を閉じていた紐を解いて、広げてみる。血が付いたりはしていないが、見た目よりかなり汚れていて、彼女の旅の径路が平坦で無かったことが伺える。


白衣の袖から出ている褐色の肌は、改めて見ると水面に立つ波を思わせる曲線の美しさがある。その分包帯の下に隠された、恐らくは人の肌として認識出来ない形貌の右手は、ことさら悲憤を感じる。


ふと見ると、幼い胸部は呼吸の上下変化をしていない。息をしていない⁉

僕は慌ててルルディを抱き起こして顔に頬を近づけ呼吸を確認しようとした。


「そこで何をしておるんじゃ? オマエは」


 いつの間にかあばら家から出てきた薬師のオババが、明らかに不審者を見るような半目で僕を見ていた。



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