五十部くんと魔法のお店
さて翌日です。
「えーっと、ここは……何の店なの?」
朝食を終えた五十部くんは、茉莉ちゃんに連れられて電車に一駅ゆられ、さらに少し歩いてきました。クリムゾンを出発してから30分ちょっと、ついに2人は目的のお店に到着です。
「ここでチャームの材料を買うんですよ」
一見すると近所のじいちゃんばあちゃんしか買い物に来ない田舎の商店のようです。お客さんがほとんど来ないからなのか、レジには誰もいません。きっと奥の座敷でテレビでも見ているのでしょう。
店の隅には入荷したのがいつだか分からないような、ひと昔どころかふた昔も前の商品が埃をかぶっています。こんな誰も買わないような物を置いておくとは、店長さんの顔が見てみたいです。
茉莉ちゃんが手に取ったのは、埃をかぶった洗濯用の粉洗剤の箱とラベルが日焼けして白くなった缶詰めです。いましたよ、買う人。
「いまどき粉洗剤? っていうか、その缶詰めの消費期限いつ!?」
「ふふっ、まぁ見ててください」
レジ台に粉洗剤と缶詰めを置くと、茉莉ちゃんはそばにあった銀の卓上ベルを2回押しました。高く響いた金属音がゆっくりと消えたその瞬間、店内の様子が一瞬でがらりと変わりました。
古ぼけた蛍光灯の白い光は、オイルランプから漏れる暖かなオレンジ色に。袋菓子や日用品が置かれていた陳列棚には、見たこともない形の器具や乾燥させた草花が代わりに並んでいます。
「……マジか〜」
やっと出てきた言葉はそんなものでした。五十部くんダメダメですね〜、そんなんじゃリポーターのお仕事はまわってこないですよ。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
魔女しか見つけられないとか、魔女しか入れないお店って憧れます。