茉莉ちゃんのチャーム
「チャームですか。確かにその手がありましたね」
戻ってきた茉莉ちゃんに晶さんが顚末を説明すると、何やら茉莉ちゃんがローブの内側をゴソゴソし始めました。
「これじゃないし、こっちでもない。あ、この前のテスト結果がこんなところに……あった、『厄除けのミサンガ』ぁ〜!」
「秘密道具?」
どこぞの猫型ロボットよろしく高々と掲げた茉莉ちゃんの手には、赤・白・黄色の三色の紐を編み合わせたミサンガが握られています。
「全然秘密じゃないですよ。これは前にクラスの友達と作ったやつですから」
……まさか、茉莉ちゃんは学校でも魔女ってことで通っているのでしょうか。
「もしかして、松樹さんは友達の前でもその格好してるの?」
どうやら五十部くんも同じことを考えたようです。
「この格好はうちの中だけです! この厄除けだって、一緒に作ったときにこっそり付けてみた色々な効果の一つです」
それを聞いて五十部くんはホッとしたようで、茉莉ちゃんにミサンガを付けてもらっています。天の声としては具体的な『色々な効果』の方が気になってしまいます。
そんな2人の様子を見ていた晶さんは、なぜかちょっと難しい顔をしています。
「松樹くん、それで大丈夫かい?」
「えっ、どういう意味ですか?」
茉莉ちゃんは頭上に?を浮かべながら、五十部くんの左手首のミサンガと晶さんの顔を交互に見比べました。
「……いや、やっぱりなんでもないよ」
晶さんは何か言いかけましたが止めてしまい、そのまま姿を消してしまいました。
「お師匠、どうしたんだろう……」
その日の夜。
「えぇぇ!」
夕飯の時間になって一階へ下りてきた五十部くんを見た茉莉ちゃんが、おかしな叫び声をあげました。店内にいた数人が何事かと茉莉ちゃんの方を見ています。
「マツリさん、どうかシマシタカ。」
「百春がまた新しい御老体を連れてきたようだから、きっとそのことだろう。」
ライラさんは食事の手を止めることなくさらりと言いました。さすがニート勇者、貧乏神ぐらいでは動じません。
「え、だって……えぇ!?」
今度は五十部くんが素っ頓狂な声を出して、自分の背後と左手首のミサンガを見比べています。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
効きませんでしたね〜(笑
charmsという章名からお察しかと思いますが、チャームは1つではありません。
次回に乞うご期待……しない方がいいかもしれませんが。