第一話 一人目現る
憧れの大学生活の始まり。新しい友との出会いがあり、恋人とかできたりして、サークル活動にも力をいれちゃう人生。
そんな淡い気持ちを携えて、早ひと月が経とうとしていた僕の大学生活。自分は今だに一人ぼっちです。
「これが現実なんだね 母さん」
あんた就職するんじゃないの?と言っていた顔を思い出したよ。
正直、待ってれば誰か自分に声をかけてくれて、そのまま友達になっちゃう?的な状況になるのではなかったのだろうか?
気がつけば周りにはいくつかのグループができていたり、2人ないし3人くらいの少人数で楽しそうにしている者達もいるではないか。
これはマズクね? もしかして出遅れちゃった系男子じゃないか? いやいや、まだ大丈夫だろう。
自分以外にも一人でいる人間はまだまだいるじゃないかね。焦らずゆっくり行けばいいんだよ自分。
「って考えが良くなかったよ」
そもそも、声をかける勇気ってどこから湧くものなんだい? 勇気の泉は枯渇してるみたいなんだけど
「・・・帰ろ」
今日の講義は4限目のマーケティング論が最後だったので、もう帰れる。
「・・・」
帰る前にトイレに寄っていこう。講義中ずっとおトイレ我慢してたんだった♥
ここから一番近いのは第一食堂に隣接してるトイレだな、うん。さっさと済ませよう。
幸いトイレは全然混んでなかった。ラッキーっ。 第一食堂はPM18:00まで開いていて、結構時間帯問わず人が出入りしているので、たまに男子トイレでさえ少し並ぶことがあるんだよね。
・・・
・・・ ・・・ ・・・
っと、誰かの視線を感じた。ような気がする。
自分はトイレの時はチャックから派ではなく、ズボンを下げてする派なのだか、下げようとしてる手を止め周りを見てみる。
今トイレの中には自分しかいない。 便座の方も扉は全てオープン状態。それなのに、誰かに見られてる気がした。 普通ならそんなの気のせいと思うだろう。 実際そう思っていたし。でも。
「ここんとこ毎日なんだよなぁ」
というか、最近ではその頻度が上がってる気がする。どこにいても誰かの視線を感じる。講義中も、食事中も、そして今いるトイレでも。 気のせいにしてはなんかなぁって感じ。
「う~ん・・・ん?」
「あっ、」
トイレの窓の隅っことはっきり目があった。