お面と仮面
度重なる小さな事件。
それを放っておいてもいいものと、そうでないものに分けるのがグランマの仕事である。
そしてグランマは、今日も四人に仕事として事件の解決へ向かわせた。
「今日は中央公園だよ。行っておいで!」
そう言われて屋敷を飛び出し、各自いつもの面をつけて森を抜け、夜の街へと飛び出す。
人気のないところを選んで駆けているので、人に見つかることはまず無い。もしあったとしても、ピエロの能力でなんとかごまかしたりしている。
そんなこんなで目的の中央公園へとたどり着いた。
そこは遊具が置いてあるエリアと、少年野球が出来る程度のグラウンドがある公園だ。そんな公園のグラウンド側で、なにやら花火をしようとしている集団がいた。
公園の遊具の辺りで立ち止まった四人は、それぞれ顔を見合わせた。
「えっと、火事が起きるから、それを事前に防げばいいんだっけ?」
「そそそそ」
蜘蛛の面をつけた琴音が確認し、それに阿修羅の面をつけた奏太が応える。うさぎの面をつけた雪乃は肩から斜めにぶら下げているポーチを優しく撫で、喋れないピエロの悠真は真っ直ぐにグラウンドにいる集団を見つめていた。
「んじゃ、ちゃちゃっと行きますか」
「もしかしたら面とか付けなくてもいいかもな」
ぐるぐると腕を回す琴音と頭の後ろで手を組む奏太。その後ろを雪乃と悠真がついていった。
そして集団の近くまでやってきた時に、琴音が声をかける。
「あのー、ここで花火すると火事になるんで、違うところでやってもらえますかー?」
「ほら、ここからならあっちのグラウンドのほうが広いっすよ」
奏太が指をさして近所の小学校があるほうを見やる。
しかし、その呼びかけにも何も答えずに、動きを止めたまま何も返事をしなかった。
「あのーちょっとー? 聞いてますー、ってなによ」
琴音が再び声をかけたとき、後ろから伸びてきた悠真の腕に肩を押さえられた。
その悠真は、自分に視線が移ったとみると、両手を胸の前に持ってきて、手のひらを琴音と奏太に向けて、『一度待って』というジェスチャーを見せた。
すると不用意に近づいてこない四人を見たのか、その集団がのそりと立ち上がった。集団は全部で六人。身長からして、少年少女達と同じくらいか一つ二つ上くらいの年齢かと思われた。いわゆる不良という部類の人間だ。
そして立ち上がった集団が四人を見たのだが、その顔につけていたものに言いようのない不気味さを感じて、琴音と奏太は背中に変な汗が流れるのを感じた。
「あれ、プリキュアハッピー。あの人はフォーゼとモモタロスと初代。あっちはウルトラマン。一番右の人はピカチュウ」
振り向いた集団がつけていたのは、お祭りの縁日なんかで売られているような、プラスチックでできたお面だった。その一つ一つの紹介をする雪乃の肩を悠真が叩くと、嬉しそうに話していた雪乃は、正義のお仕事をしているということを思い出して、姿勢を正した。
全く変わらない表情のお面で四人を見る集団は、異様な雰囲気がしてどこか気味が悪かった。
そして集団の中の一人が言う。ハッピーだ。
「あんたらのその面を奪えば、俺たちは報酬がもらえるんだよ。だから大人しく渡してくれないかなぁ?」
「め、面!?」
「なんだ? 俺たちの面が目的なのか?」
「そうだ。俺たちはその面がなんなのかはわからないけどよ、取ってきたら報酬をくれるってことだから、殴られても文句は言うなよな」
「殴ること前提かよ……」
ケラケラと笑うお面の集団。
完全に舐められているとしか思えない琴音と奏太は、指をワナワナと動かしたり首を回したりして、軽く準備運動をした。
そして奏太が、足を前後に軽く開いて、戦闘態勢をとって言った。
「かかってこいよ安物。後悔させてやるぜ!」
その言葉にプッツンした集団は、一気に四人に襲いかかった。